第19話 華蓮の失意と家出

文字数 916文字

華蓮は、顏をおおって、泣いている。
「ひどいよ・・・」
「二人とも」
「なんで・・・こんなことを?」

あまりの号泣に、由紀子と香苗は、うろたえている。
由紀子
「ごめん、おどろいた?」
「ムラムラして、抑えきれなかった」
香苗も、泣き出した。
「華蓮が可愛くて、抱きたかったの」
「無理やりで・・・ごめん」

華蓮は、おさまらなかった。
「もう嫌だ!二人とも!」
「もう我慢できない、二度と顔を見たくない!」

華蓮は、そのまま口を開かなかった。
オロオロとなるばかりの(裸の)由紀子と香苗を見ることも無い。
着の身着のまま(制服は着なかった)、財布だけをポケットに入れ、朝食も食べずに、山田屋敷から逃げるように出て行ってしまった。
(午前6時前だった、老執事大塚も起きていなかった)

由紀子と香苗も、後を追おうと思った。
しかし、着替えに手間取り、とても無理だった。

二人は、ますます、うろたえた。
由紀子
「華蓮、スマホを、置きっぱなし」
「どうしよう、連絡つかないよ」
由紀子
「制服着ていないし、カバン持って行かなかった」
「きっと学園にも来ないよ」
由紀子
「警察に言うの?」
香苗
「その原因は私たちなのに?」
由紀子
「そんなこと言わないよ、親にも言えない」
香苗
「近親相姦・・・かな」
由紀子
「血はつながっているけれど、母親違うから・・・」
香苗
「親とかおじい様にも言うの?」
由紀子
「知らない間にいなくなったって、言うしかないよ」
「本当のことは、言えない」
香苗
「うん、そうしよう」
「大事にはできないよ、このお屋敷だって」

華蓮の失踪は、朝食時に、「公式」に「判明」した。
由紀子と、香苗は、「何も知らなかった」と言い張った。
祖父剛士は、激怒した。
「草の根わけても探し出せ!」
「すぐに捜索願いを出せ!」

保は、冷ややかだった。
「いずれ、腹が減れば帰って来るでしょう」
「それか、補導されるだけのことです」
「そんなに、この屋敷が嫌なら、どこかの施設に入れるだけのこと」
「無理してまで住んでもらうほどの、家柄でも血筋でもない」

しかし、剛士は、ますます激怒した。
「もう、保は、学園の理事から外す!」
「滝本と交替だ!」
「お前こそ、この屋敷から出ていけ!」
(山田屋敷の修羅場は、この喧嘩から始まることになった)
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