第38話 華蓮の死

文字数 991文字

迎えに来た聖トマス学園職員(実は山田家子飼いの極道)の言葉は、全て嘘だった。
華蓮は、山田剛士に逢うこともなく、そのまま由紀子の部屋に通された。

華蓮は、憤った。
「どうして?約束が違う!」
「この部屋は関係が無い」

由紀子は、怒っていた。
「うるさいわね!」
「用があるのよ!」
そのまま、華蓮の頬を思い切り張った。
(香苗の目が、きつくなった)

由紀子は怒鳴った。
「勝手に逃げたくせに!」
「スマホも変えて、連絡も拒否?」
「いったい、何様のつもり?」
「しかも転学?」
「この恩知らず!」

華蓮も、怒った。
「こんな山田屋敷なんて来たくなかった!」
「毎日が、最悪で地獄だった」
「だから出た、どこが悪い?」
(香苗は、泣き出している)

由紀子は、さらに興奮した。
華蓮の胸を、いきなり、両手で突いた。
(華蓮は、バランスを失い、ベッドに横倒しになった)
(由紀子は、そのまま、華蓮を組み敷いた)
「華蓮は、私のモノなの!」
「口答えする身分じゃないの!」
(そのまま、華蓮のシャツをめくり、白い胸に爪を食い込ませた)
(華蓮の胸から出血している)

今度は、香苗が怒った。
「由紀子!何しているの!」
「華蓮を何で苛めるの?」
「あなた、何もわかっていない!」
「華蓮は子供の頃から、由紀子が嫌いなの!」
「私には、懐いていたもの」
「私の華蓮を取らないでよ!」
(そのまま、由紀子を華蓮から、引きはがそうとする)
(その動きでベッド全体が揺れた)

「二人ともやめて!」
華蓮が叫んでも、二人の取っ組み合いは(華蓮の身体の上で)、止まらない。
ますます、激しさを増した。

「まるで子供の喧嘩だよ!」
華蓮が、懸命に逃げ出そうとした時だった。
ベッドから降りる直前、もみ合う由紀子と香苗の腕が、華蓮の背中に強く当たった。

「うわ!」
華蓮は、酷くバランスを崩し、壁に頭を激突し、倒れた。
その壁の揺れで、近くの書棚から、大きな花瓶が落ち、割れた。

「きゃあ!」
由紀子が叫んだ。
割れた花瓶の破片が、華蓮の首に飛び、突き刺さっている。
香苗は華蓮の首から、ドクドクとあふれ出る血に動転した。
「由紀子のせいよ!このままじゃ、華蓮死ぬよ!」

由紀子は、声を震わせながら、内線で執事大塚に連絡を取った。
しかし、執事大塚から返事はない。
(山田保の件で、弁護士事務所に出向いていた)

動転しながら、二人は救急車を呼んだ。
しかし、到着した時には既に手遅れだった。
出血多量で、華蓮は死んでいた。
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