第13話 華蓮と春香②

文字数 895文字

華蓮と春香は、仲良く天丼を食べて、都営線に乗った。

春香が、華蓮をじっと見た。
「ねえ、私の家にも来て欲しいの」
「母さんも父さんも、逢いたいと思う」

華蓮の目が潤んだ。
「逢いたいよ、僕だって」
「いつもやさしくしてもらって」
「春雄おじさんと、仲良しで、いろんな本を教えてくれた」
「香織おばさんは、いつも美味しいパンケーキを焼いてくれた」
「正直に・・・山田屋敷には帰りたくない」
「もう、両親がこの世の人でないから」
「僕が子供だから、しょうがないけど」

春香は、華蓮の手を握った。
「由紀子ちゃんが嫌なの?」

華蓮は、苦し気な顏。
「由紀子ちゃんだけじゃなくて、香苗ちゃんも、住んでいる」
「いつも、屋敷にいると、二人で、うるさくて」
「絡んで来る、気が抜けない」
「だから、逃げ出したい」
「ピアノの先生が同じなのも嫌」
「アパート借りたいなあと」
「でも、親がいない」
「身元保証人が学園長だから、出られない」

春香は、華蓮に迫った。
「せめて、日曜とか、休みの日に一緒しない?」
「家に来て、少しは楽になると思うの」
「華蓮君、そうしようよ」
(華蓮は、恥ずかしそうに頷いていた)


春香と別れ、華蓮は山田屋敷に戻った。
由紀子と香苗が、怒り顔で、華蓮を迎えた。

由紀子
「神保町?何で?かび臭い本だらけでしょ?」
香苗
「デートでもしたの?女でもいるの?」

華蓮は、横を向いた。
「言う必要ある?僕の勝手でしょ?」
(「本を買って、天丼食べて帰っただけ」も、言いたくなかった)
(由紀子と香苗の、上から目線、子供扱いが、嫌でたまらない)
そのまま、自分の部屋に入って、鍵もかけた。
由紀子と香苗の少し騒ぐ声は、無視した。
部屋備え付けのシャワーで、華奢な身体を洗い、下着姿で、ベッドに転がり込んだ。

ウトウトしていたら、机の上に置いたスマホが鳴った。
春香からのメッセージだった。
「日曜日に、お待ちしています」
「父さんも母さんも、逢いたいって」
「食べたいものある?」

華蓮の機嫌が直った。
すぐに返信した。
「楽しみです」
「パンケーキを・・・香織おばさんと、一緒に焼きたいなあと」

春香からの返信も速かった。
「ありがとう!」
キスとハートのスタンプが大量についていた。

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