第38話  吾輩と夏の災難 24

文字数 280文字

 吾輩は細い道をてってと歩いた。いつしか道は下るのを止めた。
 吾輩はほっとした。どこまでも下って行くのなら、それは黄泉への道を選んでしまったのだろう。だが、道は変化したから、これが現世への道で合っているのだ。多分。
 いや、きっと。
 目の前に明るい光が見えた。
 吾輩は一瞬立ち止まった。
「外だ!」
 外だ! やっと外に出た!
 吾輩は走り出した。光の面はどんどんその面積を広げて行き、とうとう吾輩はその穴の出口に立った。穴の向こうに緑濃い森が見えた。外はぼんやりと煙っていた。
 しとしとと静かな音がする。
 雨だ。
 久し振りに見た外の風景は雨が静かに降る深い森だった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み