第8話  吾輩と見えない何か 2

文字数 494文字

奥様は立ち上がった。
「さて、疲れたから、お風呂に入ってもう休むわ。・・・・あっ、そうだ。その前にお花を花瓶に・・」
そう言うと部屋を出て行った。

旦那様と和樹はリビングで映画を観ている。
古い洋画だった。
奥様が顔を出した。
「お休みなさい」
「お休み」
旦那様と和樹はテレビを見ながら言った。
二人はその後も黙って映画を観ている。
吾輩は和樹の膝に乗って丸くなっていたが、飛び降りた。

キッチンのカウンターを見詰める。
キャットタワーの上の母が下りて来て吾輩の隣に座った。
何かがカウンターの所にいる。

和樹がふと吾輩を見る。
二匹の猫がカウンターを見詰めている事に気が付くとカウンターに視線を移す。
偶然、旦那様もカウンターに視線を移した。



「動いた・・・」
和樹が言った。
「今、動いたよね。あのインスタントコーヒーの瓶。すーって」
旦那様は立ち上がって、コーヒーの瓶を確認する。
「確かに動いた。滑る様に動いた・・・カウンターは濡れていないな」
「何だろう・・」
「さあ・・・」
「変だな・・」

二人はそう言うとまた映画に戻った。
コーヒーの瓶の話は終わりになったらしい。

吾輩は部屋の隅を見詰める。
母も見詰める。

あそこに何かいる。

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