第24話  吾輩と夏の災難  10

文字数 528文字

 夜になって安西家(トラの飼い主)の人々はトラがいない事に気が付いた。
「おかしいな」
家中探したがどこにもトラの気配は無かった。
「さっき、大きなトラ猫が来てさ。門の所に。それでトラが玄関から出て行ったんだよな。大きなトラ猫はトラと顔を合わせて、それで去って行ったんだ。そのままトラは玄関に帰って来た筈なんだけれど……」
和樹が言った。
「俺がすぐに二階から降りて行った時には玄関にいなかった。で、俺は玄関のドアを閉めて」
「玄関のドアが開いていたの?」
「そう」
「……おかしいわね。ちゃんと閉めた筈だわ」
「いや、開いていたよ」
奥様は眉を顰めた。
「変ねえ……」
「じゃあ、俺が部屋を出て階段を下りるその僅かな間にトラはまた出て行ったのかな? おかしいな? あいつは暑いのが苦手だから、わざわざ暑い所を出て行かないと思うけれど……。あの大きなトラ猫の後を付いて行ったのかな……?」
「どうしようかしら?」
「俺がちょっとその辺りを探して来るよ。それでトラは梅の木を伝って二階に上がって来ることが出来るから、玄関が閉まっていれば二階の窓をかりかりってやると思うよ。大丈夫だよ。ちょっとしたら帰って来ると思う」
和樹はそう言うと、じゃあちょっと探して来ると言って玄関から出て行った。

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