トッティ
文字数 464文字
牡鹿のトッティは妻と山奥で静かに暮らしていた。その年は冷夏で、秋になっても山の恵が少なかった。妻は人里近くに食べ物を探しに出かけ、罠にかかって足を傷つけてしまった。罠から逃げ出せはしたものの、やがて足の傷は腫れあがり、ついには熱で動けなくなった。
普通の鹿であればそのままあきらめていただろう。彼は人間が自らや仲間の傷を治すところを見てきた。しかし、長い棒を持った人間が自分達の仲間である鹿を撃ち殺すところも見てきた。このままでも妻は死ぬ。『器』である自分に死期は迫っていない。そこで銃を持たない人間を探した。
木こりはよく唄う。リズムにあわせて斧を振り、互いに位置を知らせあう。トットの声は、誰よりも高く澄んでいた。その歌声に森の動物達もしばし足を止めて聞き入った。彼なら間違いあるまい。トッティはわざとトットの前を見つかるように歩いていった。
トットが山を離れるとき、トッティは自分にしてやれることは無いかと後をついてきた。『器』には予言の日が近づくと引き合う定めがある。彼が何かを感じたのも運命だったのだろう。
普通の鹿であればそのままあきらめていただろう。彼は人間が自らや仲間の傷を治すところを見てきた。しかし、長い棒を持った人間が自分達の仲間である鹿を撃ち殺すところも見てきた。このままでも妻は死ぬ。『器』である自分に死期は迫っていない。そこで銃を持たない人間を探した。
木こりはよく唄う。リズムにあわせて斧を振り、互いに位置を知らせあう。トットの声は、誰よりも高く澄んでいた。その歌声に森の動物達もしばし足を止めて聞き入った。彼なら間違いあるまい。トッティはわざとトットの前を見つかるように歩いていった。
トットが山を離れるとき、トッティは自分にしてやれることは無いかと後をついてきた。『器』には予言の日が近づくと引き合う定めがある。彼が何かを感じたのも運命だったのだろう。