ハイアット

文字数 697文字

 オオワシのハイアットは、まだ名前も無く空の『器』だったころ、人間と同じ獲物を狙って撃たれたことがあった。
「人間め。なんてことしやがる。」
 ハイアットは沼地に落ちて、気を失った。

「おお、気付いたか。」
 目を開けたハイアットの前に人間の顔があった。
「このやろう!」
 ハイアットはその顔に向けてくちばしを立てようとしたが、体が動かなかった。
「無理はするな。しかし、すまなかったな。流れ弾が当たっちまって。」
 銃弾は右の翼を突きぬけたが、その衝撃で羽の骨が折れていた。人間のカモ猟の中へ入ったハイアットは、誤って撃たれたところをこの男に助けられたようだ。男はハットイと周囲から呼ばれていた。

 しばらくすると部屋の中を飛びまわれるほどに回復した。しかしまだ、自力で狩りをできるほど長くは飛んでいられなかった。彼にハイアットという名前をつけて、たまに狩りにつれていった。男が連れた黒い斑点模様の犬が吠えると、水辺のカモ達が一斉に飛び立った。
「パン!パン!」
 乾いた高い音が辺りに響。男が銃を撃ったのだ。飛び立ったカモの群れから一羽が落ちてくる。そこへ犬が走っていってしきりに鳴く。人間は不思議な狩りをするものだと思った。

 さらに数ヶ月が経つと、ハイアットの怪我はすっかり良くなっていた。ハイアットはいつでも逃げ出すことはできたが、人間に興味を覚えた。草食かと思うと肉もよく食べる。が、生肉は食べない。血の匂いのしない、焦げ臭い肉ばかり食べている。毛皮を毎日脱いだり着たり忙しそうだ。一年も一緒に暮らしたろうか。儀式の時が近づき、ハイアットは山へ帰った。そして『器』となった。
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登場人物紹介

ユナ・バーン

カナタの母

サーベル使いで、サーベルタイガー・ユナの異名を持つ

カナタ

『器』の一人

10歳まで山奥に隠れて暮らす

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