脱出
文字数 542文字
城が崩れ、王都からは人が消えた。その廃墟では地下から身も凍るようなどす黒く低いうなり声が続いていた。
「どこだ!やつらはどこに隠れた。」
ユナは気を失ったカナタを連れ、王都の西にある灰色の大地にいた。そして、カナタを乗せた黒馬のテヘナと共に、巨大な洞窟へと入っていた。
洞窟は入り組んでいた。冷たく透き通った水が流れている。腰ほどまである水の中をしばらく進んだ。やがて、水から上がり、ひんやりした洞窟の中でユナはカナタを降ろした。
しだいに目がなれるに従い、土ボタルの青白い光の中に白く湿った壁が見えてきた。鍾乳洞。その真っ白な濡れた壁は、いかなる植物の根も受け付けなかった。たとえ、種や胞子が飛んでこようとも、滴り落ちる水によってすべて洗い流された。ここは、人が辿り着ける数少ない動物だけの世界。植物のないここなら、獣の目も届かないとユナは考えたのだ。
濡れた服を脱ぎ、包んだきた乾いた毛布に包まると、傷だらけの体でカナタを抱え、そのぬくもりで暖めた。カナタの顔は、まるで悪夢を見ているように苦痛でゆがんでいた。ユナはカナタが幼いころによく聞かせていた子守唄を口ずさんだ。その声は、冷え切った洞窟内に優しく響き続けた。やがて母子は疲れた体を休めるようにゆっくりと眠った。
「どこだ!やつらはどこに隠れた。」
ユナは気を失ったカナタを連れ、王都の西にある灰色の大地にいた。そして、カナタを乗せた黒馬のテヘナと共に、巨大な洞窟へと入っていた。
洞窟は入り組んでいた。冷たく透き通った水が流れている。腰ほどまである水の中をしばらく進んだ。やがて、水から上がり、ひんやりした洞窟の中でユナはカナタを降ろした。
しだいに目がなれるに従い、土ボタルの青白い光の中に白く湿った壁が見えてきた。鍾乳洞。その真っ白な濡れた壁は、いかなる植物の根も受け付けなかった。たとえ、種や胞子が飛んでこようとも、滴り落ちる水によってすべて洗い流された。ここは、人が辿り着ける数少ない動物だけの世界。植物のないここなら、獣の目も届かないとユナは考えたのだ。
濡れた服を脱ぎ、包んだきた乾いた毛布に包まると、傷だらけの体でカナタを抱え、そのぬくもりで暖めた。カナタの顔は、まるで悪夢を見ているように苦痛でゆがんでいた。ユナはカナタが幼いころによく聞かせていた子守唄を口ずさんだ。その声は、冷え切った洞窟内に優しく響き続けた。やがて母子は疲れた体を休めるようにゆっくりと眠った。