上陸
文字数 537文字
ユナたちは島の住人から手漕ぎのカヌーを一艘借りた。
「漕げるか?」
隊長の問いに
「いや。」
ユナはそっけなく答えた。一刻も早く島へ渡りたかった。
「なら、前向きに座って言う通りに重心を傾けろ。おれはアミューズメントパークのバイトで漕いだことがある。バイトの力なめんなよ。」
そう叫ぶと、オールを勢いよく水に突き立てながら力一杯漕ぎ出した。
「左に寄れ!」
カヌーは島から大きく左へ逸れた。
「なぜ、真っ直ぐ行かない。」
ユナは島の方見ながら後ろで懸命に漕ぐ男に叫ぶ。
「海には潮の流れってやつがある。無理に進もうとすりゃ押し戻さちまう。だが、流れに乗りさえすりゃ一気に進むんだ。隊を動かすのと同じさ。」
すっとぼけてはいるが食えないやつだ。
「不思議だ。お前といると勝てそうな気になる。」
ユナは潮風を受けながら落ち着きをとりもどしていた。
「男は泣きたいときほど笑うものよ。そうすりゃ、相手がビビってくれらあ。」
二人は獣のいる島に向けて大笑いした。
「オレはブド・コライ。今度会ったら手合わせを願いたいものだな。」
隊長はユナを島の海岸に降ろしながら言った。
「縁があったらな。」
ユナはこう答えると、急いで獣のいる島の中央へ駆け登っていった。
「漕げるか?」
隊長の問いに
「いや。」
ユナはそっけなく答えた。一刻も早く島へ渡りたかった。
「なら、前向きに座って言う通りに重心を傾けろ。おれはアミューズメントパークのバイトで漕いだことがある。バイトの力なめんなよ。」
そう叫ぶと、オールを勢いよく水に突き立てながら力一杯漕ぎ出した。
「左に寄れ!」
カヌーは島から大きく左へ逸れた。
「なぜ、真っ直ぐ行かない。」
ユナは島の方見ながら後ろで懸命に漕ぐ男に叫ぶ。
「海には潮の流れってやつがある。無理に進もうとすりゃ押し戻さちまう。だが、流れに乗りさえすりゃ一気に進むんだ。隊を動かすのと同じさ。」
すっとぼけてはいるが食えないやつだ。
「不思議だ。お前といると勝てそうな気になる。」
ユナは潮風を受けながら落ち着きをとりもどしていた。
「男は泣きたいときほど笑うものよ。そうすりゃ、相手がビビってくれらあ。」
二人は獣のいる島に向けて大笑いした。
「オレはブド・コライ。今度会ったら手合わせを願いたいものだな。」
隊長はユナを島の海岸に降ろしながら言った。
「縁があったらな。」
ユナはこう答えると、急いで獣のいる島の中央へ駆け登っていった。