文字数 341文字

 カナタの心が闇に耐え切れず、憎しみの淵に沈もうとした時、急に暖かな感触に触れた。それは、幼いときに感じた懐かしい温もりだった。不思議と落ち着いた。カナタの心は赤ん坊のころに戻っていた。

 ユナの優しい笑顔とその腕の柔らかさ。背中の温もり。すべてが、幸せだったころの出来事だ。お弁当を持って野原へも行った。鳥のさえずりや川のせせらぎを聞いた。歌が聞こえる。そうだ、よく母が歌っていた。

 カナタの心はさらに過去に戻っていった。
「この子に名前をつけなきゃね。」
母の声だ。
「どこにいても私たちの心が側にいられるように。カナタ。」
 そうだ、父、ゲノがつけてくれた名前だ。
「いい名前ね。カナタ。よろしくね。」
 母、ユナのキラキラと優しく愛情に満ちた笑顔が目の前一杯に広がる。
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登場人物紹介

ユナ・バーン

カナタの母

サーベル使いで、サーベルタイガー・ユナの異名を持つ

カナタ

『器』の一人

10歳まで山奥に隠れて暮らす

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