潜入
文字数 680文字
ゼノとカナタは炎と混乱の中、城の外に二頭の馬を残し、暗く狭い隠し通路にいた。松明の明かりを便りに、ユナのいる地下牢まで一気に進んだ。
「母さん!」
カナタはユナの牢の前で小さく叫んだ。
「カナタ。無事でよかった。」
武人として人前で泣くことなど無かったユナだったが、本当のわが子に会ったように涙を流した。ドラゴンの騒ぎで、番兵もいない。ゼノは鍵の束を持ってくるとカナタに渡した。
「父さんは?」
牢の鍵を一本一本確かめながら、カナタはユナに尋ねた。
「ドラゴンの騒ぎが始まってから見ていません。サタドゥールと一緒なのでしょう。」
ユナの表情は暗く沈んだ。三人は誰もいない地下をゆっくりあがっていった。祭壇の間にはおびただしい血の飛び散った後が残っていた。動物の毛やサメの歯が散乱している。それは『器』だったものたちをドラゴンが食した晩餐の後だった。ユナはカナタの目を覆うようにして先へ進んだ。ユナは壁に飾られていたサーベルを一本抜き取った。
「ここからは、兵がいます。私が囮になりますから、二人は王の間へ急いでください。」
ユナの言葉に
「殺すなよ。」
と、ゼノは小声で言った。
「近衛第一師団長の娘だぞ。」
ユナは薄笑いをしながら返した。
「元だ。」
ゼノはそういうと、ユナの頭にかるく手を乗せ
「城の外にアザのある馬がいる。必要なら使え。賢い子たちだ。これを見せろ。先に死ぬような親不孝なまねはするな。」
と、彼女に自分の左手の手袋を渡した。そして、
「反逆者が逃げたぞ!」
ゼノはそう叫ぶと、カナタと共に壁の抜け穴へと入っていった。
「母さん!」
カナタはユナの牢の前で小さく叫んだ。
「カナタ。無事でよかった。」
武人として人前で泣くことなど無かったユナだったが、本当のわが子に会ったように涙を流した。ドラゴンの騒ぎで、番兵もいない。ゼノは鍵の束を持ってくるとカナタに渡した。
「父さんは?」
牢の鍵を一本一本確かめながら、カナタはユナに尋ねた。
「ドラゴンの騒ぎが始まってから見ていません。サタドゥールと一緒なのでしょう。」
ユナの表情は暗く沈んだ。三人は誰もいない地下をゆっくりあがっていった。祭壇の間にはおびただしい血の飛び散った後が残っていた。動物の毛やサメの歯が散乱している。それは『器』だったものたちをドラゴンが食した晩餐の後だった。ユナはカナタの目を覆うようにして先へ進んだ。ユナは壁に飾られていたサーベルを一本抜き取った。
「ここからは、兵がいます。私が囮になりますから、二人は王の間へ急いでください。」
ユナの言葉に
「殺すなよ。」
と、ゼノは小声で言った。
「近衛第一師団長の娘だぞ。」
ユナは薄笑いをしながら返した。
「元だ。」
ゼノはそういうと、ユナの頭にかるく手を乗せ
「城の外にアザのある馬がいる。必要なら使え。賢い子たちだ。これを見せろ。先に死ぬような親不孝なまねはするな。」
と、彼女に自分の左手の手袋を渡した。そして、
「反逆者が逃げたぞ!」
ゼノはそう叫ぶと、カナタと共に壁の抜け穴へと入っていった。