伝説

文字数 497文字

 かつてこの世界に、人よりも邪悪で強力な獣がいた。神はその力を恐れ、八つの動物に分け、封印された。

「古い言い伝えじゃよ。」
 白髪の老人は窓から覗く青く澄んだ空を見つめながら言った。
「でも、あなたは探している。」
 部屋の隅に座り、赤子をあやしながら、若い婦人が深い溜息とともに小さくつぶやいた。
「この世界に危機が訪れるとき、一つとなり、蘇らん。」
 扉を開けて入ってきたガッシリとした若い男が続けた。婦人は抱えていた赤子をゆっくりとベッドに置くと、立ち上がって男の上着を受け取った。老人は軽くうなづいて、言葉を続けた。
「この世界は1つの命じゃ。植物たちは互いに地中に根をはり、一つの巨大な意識を作っておる。わしは幸か不幸か選ばれてしまったようじゃ。予言の地への案内人として。」
 老人はベットで寝ている赤子を悲しそうに見つめた。
「この子の額のアザがその印なんですね。」
 若い男がベッドの脇から覗き込む。その子の額には目のような赤いアザがあった。
「人にはその獣の叡智が与えられたと聞く。その象徴なのであろう。」
 老人はその子が十歳になったとき、迎えに来ると言って去っていった。
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登場人物紹介

ユナ・バーン

カナタの母

サーベル使いで、サーベルタイガー・ユナの異名を持つ

カナタ

『器』の一人

10歳まで山奥に隠れて暮らす

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