9年前 正月
文字数 902文字
「ママ、見て!年賀状、これ、ヒロからだよね!?」
元旦、母親が仕分けして渡してくれた年賀状を並べていると、年号と、干支と、少しの文章と、かろうじて「ヒロ」と読める字が大きく書かれたものがあった。
「え~、ユキには?」
リビングで一緒に自分宛の年賀状を並べていたミユキが、それをすかさず取り上げ、よく見ようとした。
「ちがうよ、僕のだよ、僕に来たやつだよぉ!」
コウキが取り返そうと必死で手を伸ばし跳ねた。
「ケンカしないの」
呆れた様子で母親が窘める。そしてリエから回収した年賀状に目を通した。
「コウキ、来月遊びにきませんかって書いてあるわよ」
「え!行く!!」
コウキが目を見開き即答した。
「ユキは~?」
ミユキが口を尖らせる。
「市内でサッカーのイベントがあるんですって。それに当たったから、コウくんも一緒にどうですか、だって」
「行くーーー!!」
コウキは飛び上がって喜んだ。
「ふぅ~ん、サッカーはつまんないからユキはいい」
ミユキは半分本音、半分強がりを言った。
「コウくん、ヒロくんとこに電話してみましょ。ママもヒロくんママに聞いてみないと」
「でんわ!する!」
ミユキは拗ねて部屋に戻ってしまった。
「…えぇ、えぇ、じゃあお言葉に甘えさせてもらいますね。細かい時間とかは…、えぇ、そうですね、また連絡します」
母親同士の電話中、コウキは母親の側でじっとして聞き耳を立てていた。そして、無事行けそうだとわかるともう嬉しくて叫びたかったが、電話を代わってもらえなくなると思って我慢した。すると、電話越しにヒロの歓声が聞こえてきた。さらにヒロの母親の叱る声がした後、母親が苦笑いしながら受話器をコウキに渡した。
「も、もしもし」
『コーキ?あけおめ!』
(ヒロの声だ)
「ヒロ、あけましておめでとう!」
『聞いた?ミナミ選手が来るんだって!絶対一緒に会いに行こう!』
「うん、絶対、行く」
『約束だぞ!』
「うん、約束!」
それから二、三会話をして、電話はあっという間に終わってしまった。もっとたくさん話したいことはあったが、会ってからのお楽しみにすることにした。
年賀状を胸に抱き、
「いいお正月だなぁ~」
としみじみと言うと、それを聞いた両親が吹き出した。
元旦、母親が仕分けして渡してくれた年賀状を並べていると、年号と、干支と、少しの文章と、かろうじて「ヒロ」と読める字が大きく書かれたものがあった。
「え~、ユキには?」
リビングで一緒に自分宛の年賀状を並べていたミユキが、それをすかさず取り上げ、よく見ようとした。
「ちがうよ、僕のだよ、僕に来たやつだよぉ!」
コウキが取り返そうと必死で手を伸ばし跳ねた。
「ケンカしないの」
呆れた様子で母親が窘める。そしてリエから回収した年賀状に目を通した。
「コウキ、来月遊びにきませんかって書いてあるわよ」
「え!行く!!」
コウキが目を見開き即答した。
「ユキは~?」
ミユキが口を尖らせる。
「市内でサッカーのイベントがあるんですって。それに当たったから、コウくんも一緒にどうですか、だって」
「行くーーー!!」
コウキは飛び上がって喜んだ。
「ふぅ~ん、サッカーはつまんないからユキはいい」
ミユキは半分本音、半分強がりを言った。
「コウくん、ヒロくんとこに電話してみましょ。ママもヒロくんママに聞いてみないと」
「でんわ!する!」
ミユキは拗ねて部屋に戻ってしまった。
「…えぇ、えぇ、じゃあお言葉に甘えさせてもらいますね。細かい時間とかは…、えぇ、そうですね、また連絡します」
母親同士の電話中、コウキは母親の側でじっとして聞き耳を立てていた。そして、無事行けそうだとわかるともう嬉しくて叫びたかったが、電話を代わってもらえなくなると思って我慢した。すると、電話越しにヒロの歓声が聞こえてきた。さらにヒロの母親の叱る声がした後、母親が苦笑いしながら受話器をコウキに渡した。
「も、もしもし」
『コーキ?あけおめ!』
(ヒロの声だ)
「ヒロ、あけましておめでとう!」
『聞いた?ミナミ選手が来るんだって!絶対一緒に会いに行こう!』
「うん、絶対、行く」
『約束だぞ!』
「うん、約束!」
それから二、三会話をして、電話はあっという間に終わってしまった。もっとたくさん話したいことはあったが、会ってからのお楽しみにすることにした。
年賀状を胸に抱き、
「いいお正月だなぁ~」
としみじみと言うと、それを聞いた両親が吹き出した。
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