文字数 1,246文字

あれから
コウキとの別れから3日経った。


花火の後、島は大騒ぎになった。
まず、リエが倒れた。ターミナル広場でケントを探している最中、突然倒れて病院に担ぎ込まれた。
そのケントは、波止場のテトラポッドの隙間で発見された。花火の打ち上げ場所から見るのが一番すごいと思ってこっそり紛れこんだのだが、隠れている内にそのまま眠ってしまったそうだ。
そしてコウキに関しては、ほとんどヨシマサが矢面に立ってくれた。3人で寺を探すことになった経緯はもちろん、境内では手分けして探したことにして大人たちに報告してくれた。

ヨシマサの話を基にコウキの捜索が始まり、自分たちは本堂の広間で待機になった。ヨシマサは、説明した時の落ち着いて堂々とした様子から一転、部屋の隅で膝を抱え俯いてしまった。かける言葉が見つからず、沈黙が流れた。
しばらくして夜の捜索は切り上げられ、夜明けを待つことになった。帰ってもよいと言われたが、ヨシマサが気になり残ることにした。
本堂と広間の一つが捜索隊の仮眠室になり、もう一つの広間にヨシマサと2人で寝ることになった。布団を敷く間も、ヨシマサは動かなかった。
「マサ、少し寝よ」
コウキが消えたのを目の当たりにしたのは自分たちだけで、本当はもっと他に言うべきことがあるかもしれないし、寝ている場合じゃないのかもしれなかったが、かける言葉も思いつかず結局そんなことしか言えなかった。ヨシマサに反応はなく、言った自分も寝る気にはなれなかった。他の部屋は皆すでに眠っていた。再びの静寂がしばし続いた後、
「ヒロにい」
とくぐもったヨシマサの声がした。
「ん?」
少し声が掠れてしまった。ヨシマサは顔を伏せたまま続けた。
「コーちゃんがさ、崖から落ちた日の朝、俺、裏山に行ったんだ」
初めて聞く話だった。
「その時、俺……」
ごくりと喉が鳴った。
「俺、目印の祠、壊して」
「そのままだ、黙って逃げて」
「誰にも言えないでいたら、コーちゃんが落ちてるって騒ぎになってて」
「俺ずっと……ずっと誰にも言えないままで」
声がどんどん聞こえづらくなった。
「俺、俺……」
ヨシマサは、涙と鼻水で話せなくなって、とうとう顔を上げた。
「俺がコーちゃん死なせちゃっ」
「違う!」
ヨシマサの言葉を遮り彼を抱き締めた。
「違う、絶対違う」
違う、違うよと繰り返しながら、泣きじゃくるヨシマサの背中をさすり続けた。
何か言わなきゃとも思ったが、何を言ってもはまらない気がして、だけど絶対違うから、それだけを伝え続けた。

翌朝目を覚ましたヨシマサに、カメラを渡して今まで撮った画像を見せた。
「コウキ、楽しそうだな。みんなも」
「……」
ヨシマサの指は、彼とコウキの2人で写った画像が出たところで動きを止めた。
「こんなに楽しそうで、めちゃめちゃいい表情(かお)じゃん…だから絶対、お前のせいだなんて思ってない。もし、もし原因がヨシマサだとしても、許してなきゃこんな風に笑えないよ」
言語化しきれないこの思いが、彼に上手く伝わったかはわからないけど、ヨシマサは涙を流しながら何度も頷いた。
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