9日②

文字数 852文字

中はこじんまりとしたホールで、被災当時のジオラマや、災害前後の風景写真が展示してあった。
入口の辺りに、当時の災害発生状況、原因などがパネルで解説してあった。
それによると、発生の原因は高潮とかつてない強風で、津波のような現象が起こったことによると書いてあった。
被害は甚大で、この島だけではなく、隣接する島や、本土の港の多くの建物が浸水し、建て替えを余儀なくされた。水害はもちろん、強風の影響は更に広域に渡った。本土を含め多くの鉄塔が倒れ停電になり、ライフラインが機能停止した。被災直後、公共交通機関が機能しない中、車しか頼れる移動手段がなかったために、どこのガソリンスタンドにも車が殺到した。しかし販売する方も、被災後しばらくは交通機関が再開せず車利用が続くことを想定して、1台当たりの給油量などに制限を設けた。ヒロたちが明け方から並ぶはめになったのもそのためだった。

災害発生時、日帰り出張中だった父親は、複数人でいくつも車を乗り継ぎ2日かけて帰宅した。
建物が倒壊したり、物が飛ばされて、様々なものが被害を受けた他にも、いかに多くの人々が困難に直面し辛い思いをしていたかが改めてわかる。
ただ、きちんと避難する人が多かったこともあり、災害規模に対して死傷者は少なかったとも書いてあった。それでも確実に死傷者がいたこと、見えない被害者がたくさんいたことを思うと、胸が痛んだ。

ここまでの被害を生み出した強風は、異常気象という他ないという様なことが書いてあった。ただ、異変の予兆めいたことはあったらしい。災害の起きる数日前に、島と本土の間の海上で突然竜巻が発生し、小型船が転覆する事故が起きていた。2つを関連づける科学的根拠はないが、何かしらの関係があるのではないかと多くの人が考えていると書かれていた。

一通り目を通して、奥の方に目をやると、そちらは風景写真から人メインの写真になっているようだった。行こうとして、リエの言葉を思い出した。

『見なくてよかったよ、あんなの』

(………)
それ以上進まず、記念館を後にした。
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