文字数 359文字

あれから眠れぬまま朝を迎えた。
クロは文机の座布団で丸まって寝ている。香織はまだ眠っている様で、敷地内は静まりかえっている。人の気配を感じたくて、外へ出ることにした。
「クロ、一緒に市場行こう…魚買うから」
反応がない。
「…さっきは、ごめん。あと、ずっと側にいてくれて、ありがとう」
昨夜離れに戻ってからしばらくクロを抱きかかえたままでいたのだが、心配して声ををかけたクロの

に思わず驚いてしまった。
クロは静かにヒロの腕から抜け出したが、外には出ずにヒロからつかず離れずにいた。
(俺、めちゃめちゃ感じ悪かったのに、ずっと側にいてくれた…もっと早く声をかけるべきだったのに…)

少しの沈黙の後、クロがゆっくりと起きあがり、そろそろとヒロに近づく。
“お付き合いしましょ”
やわらかな声色に安堵と後悔が押し寄せ、思わずクロを抱きしめた。
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