文字数 323文字

山を拓いて造られたというかつての

タウンを出て市街地へ向かう。
冷房の効きの悪さに耐えきれず助手席の窓を開けると、熱気が湿った肌に纏わり付くように襲いかかってきた。

車は新興住宅地と市街地を結ぶ新道を進み、麓を走る旧道との合流地点へ向かってまっすぐ下り続ける。
申し訳程度の風に吹かれながら、ふと旧道を見おろしたその瞬間、目の前にあの凍える朝の光景が広がった。思わず息をのみ無意識に片腕をさする。
運転席からミラー越しに目をやった母親が
「…まだ時々、あの長い車の列があるような気がするのよね」
と独り言の様に呟いた。

思えば通学路や主要バスの路線ではないこの道を通るのは、ずいぶん久しぶりのことだった。

(だからかな。それとも)

今日の目的地のせいだろうか。
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