第17話 協力者
文字数 2,080文字
思わぬ形ではあるが、俺たちの他にも渡のことを知らない人物の登場に状況が変わったことを確信する。
「どうしよう、呼ぶって言ってもなんて返信すればいい?あとここの場所、女人禁制じゃなかったっけ?」
メッセージを直接やりとりしていた佐野が次の一手をどうするべきか俺たちに指示を仰ぐ。
「女人禁制なんてどうせ女子が来ないの分かって勝手に言ってただけだから別にいいぞ。ここの位置情報を送信すればいいんじゃない?」
片桐がそう言いながら佐野の横へ行き、携帯電話の液晶画面を覗く。
「片桐俺の代わりにやり取りしていいぞ。」
あまり文章での会話も得意ではない佐野が片桐に携帯電話を手渡し、メッセージのやり取りを任せる。
「了解、ちょっと文章考えるからみんなもできたら読んで。」
片桐が真剣な顔つきになり、文字を打ち始めるので俺たちもそれを見守る。2分ほど画面と睨めっこしていたが、幾田に送る文章を書き終わった片桐がその内容を読み上げ最終確認に入る。
「あの渡という女の事は、俺以外にも上野、片桐、工藤、永瀬も知らない。今そのメンバーで秘密基地で遊んでいる。秘密基地の場所を位置情報から送るから、時間があるならここへ来てみんなに話を聞かせてほしい。以上、どうかな?これが全文なんだけど。」
「いいじゃない。それで送信してみてしばらく待とうぜ。」
無駄の無い洗練された内容に俺も工藤もGOサインを出す。
「うん、それで送ってみようぜ。」
「了解、送信したわ。しばらく返信くるまで待ってみよう。」
片桐が携帯電話を佐野に返し、自分が元いた席に戻る。幾田の協力が得られれば事態が好転するかも知れない。
「俺らや幾田の他にも渡のこと知らない奴、探せばいるんじゃねえか?」
上野はそう考察するが、幾田以外からそのような話がでていないため、なんとも言えなかった。
「どうだろうな、でも幾田も良く打ち明けてくれたもんだよ。大人しいイメージだったから意外だな。」
工藤が不思議そうな顔をするのも無理はない。幾田環は黒のロングヘアのイメージといつも物静かな印象しかなく、清楚で顔立ちは悪くないが地味というワードが払拭できない、そんな存在だった。
美術部に所属しており絵がうまかったが、それをアピールすることもなくどちらかと言えばオタクっぽい性格である事は知っていた。
「それ、俺もビックリした。ちゃんと言いたいことあったらいうタイプなんだな。」
俺がそう答え全員が同じように口をそろえる。
そんな会話をしている間に佐野が幾田からの返信を俺たちに知らせる。
「返事来たわ、そこ家から近そうだからちょっと準備したらすぐ行くね、って言ってる。結構近所なのかな。待ってるって返しとくか。」
「OK、幾田の家この辺りだった気がするわ、一応来る前に綺麗にしておくか。」
片桐がそういうなり、小屋の中の掃除が始まる。掃除と言ってもガラクタを一か所にまとめたり、持ち込んだパイプ椅子の上を軽く拭いたり簡素ではあるが初の女子の来客に備える。
それから10分もたたないうちに、幾田からそろそろ着くとのメッセージが届いた。炭焼き小屋の外まで出迎えに行くと、もうすぐ外の道まで幾田が来ていた。
「お待たせ、ここがみんなの秘密基地なんだね。」
雨の中、白いビニール傘を差した幾田は部屋着と思われる黒のジャージにサンダルと言う、何も飾らない格好で現れた。
「ようこそ、炭焼き小屋へ。さぁ入って。」
俺が幾田を小屋の中に招き入れる。普段ならくるはずもない珍客に少し緊張する。幾田の方も傘をしまいながら小屋の中を物珍しそうに見回し、ゲスト席に設けた一番しっかりとしたパイプ椅子に腰掛ける。
「すごいね、ここみんなで作ったの?」.
「そうだよ、勝手に廃墟の小屋を占領してるだけなんだけどな。それにしても早かったな。」
片桐がそう言って笑うとまだ緊張が解けないのか幾田は少し小声で答える。
「私の家ここからすぐだから全然迷わずこれたよ。あ、佐野くんごめんね、いきなりメッセージ送ったりして。」
佐野がいいよ、と短く返事をして俺たちは本題に入ろうとする。
「さっそくなんだけどさ、幾田も気付いてたらしいな。三組に一人知らない奴が増えてることに。」
工藤が切り出すと幾田はうん、と静かに答える。
「俺たち意外全員渡のこと知ってると思ってたけどそうじゃないんだな。」
上野の発言に対し幾田が心配そうな表情をする。
「いや、私以外の友達はみんな知ってるみたいだったよ。最初は転校生かなと思ったんだけどね。」
どうやら幾田も同じことを考えていたらしいが、それを共有する人がおらず俺たち以上に孤独な中過ごしていたようだ。
「簡単でいいんだけどさ、幾田の話を聞かせてくれないか?俺たちの話も後でするから。」
「分かった、じゃあ話すね。」
俺が幾田に促すと、幾田は少し詰まりながらも自分の言葉ではっきりと話し始めた。新たな協力者、幾田環の証言に俺たちも静かに耳を傾けた。
「どうしよう、呼ぶって言ってもなんて返信すればいい?あとここの場所、女人禁制じゃなかったっけ?」
メッセージを直接やりとりしていた佐野が次の一手をどうするべきか俺たちに指示を仰ぐ。
「女人禁制なんてどうせ女子が来ないの分かって勝手に言ってただけだから別にいいぞ。ここの位置情報を送信すればいいんじゃない?」
片桐がそう言いながら佐野の横へ行き、携帯電話の液晶画面を覗く。
「片桐俺の代わりにやり取りしていいぞ。」
あまり文章での会話も得意ではない佐野が片桐に携帯電話を手渡し、メッセージのやり取りを任せる。
「了解、ちょっと文章考えるからみんなもできたら読んで。」
片桐が真剣な顔つきになり、文字を打ち始めるので俺たちもそれを見守る。2分ほど画面と睨めっこしていたが、幾田に送る文章を書き終わった片桐がその内容を読み上げ最終確認に入る。
「あの渡という女の事は、俺以外にも上野、片桐、工藤、永瀬も知らない。今そのメンバーで秘密基地で遊んでいる。秘密基地の場所を位置情報から送るから、時間があるならここへ来てみんなに話を聞かせてほしい。以上、どうかな?これが全文なんだけど。」
「いいじゃない。それで送信してみてしばらく待とうぜ。」
無駄の無い洗練された内容に俺も工藤もGOサインを出す。
「うん、それで送ってみようぜ。」
「了解、送信したわ。しばらく返信くるまで待ってみよう。」
片桐が携帯電話を佐野に返し、自分が元いた席に戻る。幾田の協力が得られれば事態が好転するかも知れない。
「俺らや幾田の他にも渡のこと知らない奴、探せばいるんじゃねえか?」
上野はそう考察するが、幾田以外からそのような話がでていないため、なんとも言えなかった。
「どうだろうな、でも幾田も良く打ち明けてくれたもんだよ。大人しいイメージだったから意外だな。」
工藤が不思議そうな顔をするのも無理はない。幾田環は黒のロングヘアのイメージといつも物静かな印象しかなく、清楚で顔立ちは悪くないが地味というワードが払拭できない、そんな存在だった。
美術部に所属しており絵がうまかったが、それをアピールすることもなくどちらかと言えばオタクっぽい性格である事は知っていた。
「それ、俺もビックリした。ちゃんと言いたいことあったらいうタイプなんだな。」
俺がそう答え全員が同じように口をそろえる。
そんな会話をしている間に佐野が幾田からの返信を俺たちに知らせる。
「返事来たわ、そこ家から近そうだからちょっと準備したらすぐ行くね、って言ってる。結構近所なのかな。待ってるって返しとくか。」
「OK、幾田の家この辺りだった気がするわ、一応来る前に綺麗にしておくか。」
片桐がそういうなり、小屋の中の掃除が始まる。掃除と言ってもガラクタを一か所にまとめたり、持ち込んだパイプ椅子の上を軽く拭いたり簡素ではあるが初の女子の来客に備える。
それから10分もたたないうちに、幾田からそろそろ着くとのメッセージが届いた。炭焼き小屋の外まで出迎えに行くと、もうすぐ外の道まで幾田が来ていた。
「お待たせ、ここがみんなの秘密基地なんだね。」
雨の中、白いビニール傘を差した幾田は部屋着と思われる黒のジャージにサンダルと言う、何も飾らない格好で現れた。
「ようこそ、炭焼き小屋へ。さぁ入って。」
俺が幾田を小屋の中に招き入れる。普段ならくるはずもない珍客に少し緊張する。幾田の方も傘をしまいながら小屋の中を物珍しそうに見回し、ゲスト席に設けた一番しっかりとしたパイプ椅子に腰掛ける。
「すごいね、ここみんなで作ったの?」.
「そうだよ、勝手に廃墟の小屋を占領してるだけなんだけどな。それにしても早かったな。」
片桐がそう言って笑うとまだ緊張が解けないのか幾田は少し小声で答える。
「私の家ここからすぐだから全然迷わずこれたよ。あ、佐野くんごめんね、いきなりメッセージ送ったりして。」
佐野がいいよ、と短く返事をして俺たちは本題に入ろうとする。
「さっそくなんだけどさ、幾田も気付いてたらしいな。三組に一人知らない奴が増えてることに。」
工藤が切り出すと幾田はうん、と静かに答える。
「俺たち意外全員渡のこと知ってると思ってたけどそうじゃないんだな。」
上野の発言に対し幾田が心配そうな表情をする。
「いや、私以外の友達はみんな知ってるみたいだったよ。最初は転校生かなと思ったんだけどね。」
どうやら幾田も同じことを考えていたらしいが、それを共有する人がおらず俺たち以上に孤独な中過ごしていたようだ。
「簡単でいいんだけどさ、幾田の話を聞かせてくれないか?俺たちの話も後でするから。」
「分かった、じゃあ話すね。」
俺が幾田に促すと、幾田は少し詰まりながらも自分の言葉ではっきりと話し始めた。新たな協力者、幾田環の証言に俺たちも静かに耳を傾けた。