第69話 光ちゃんとのお別れ
文字数 1,730文字
ものすごい地響きがして、竜魔王が倒れた。
ダグラスもクラークもハワードも、肩で息をしている状態でなかなか呼吸が整わない。
気が付いたら竜魔王から出ている光の粒子が洞窟いっぱいに広がっていた。もう、聖女の結界も消えてしまっている。
やがて光の粒子になったドラゴンの形をしたものは、男性の形へと変化を遂げていった。
『ラディウス』
私の中から、光ちゃんが飛び出して行った。
まさか私の中から光そのもののような女性が出てくるとは思ってもいなかったのか、クラークもハワードも唖然として見ている。
光ちゃんは、倒れてしまっているラディウスに縋りついて、もう目が開けられないくらいの光を放っていた。
どれくらい経ったのだろう。長い時間だったかもしれないし、一瞬だったのかもしれない。
気が付いたら竜魔王……ラディウスが目を開いていた。
『ルーチェ』
『ラディウス。やっと条件がそろったの。これで私達、天界に帰れるわ』
『条件?』
そう言ってラディウスは、私を見て……、そして、壁に激突して打ち捨てられたままのエミリーを見た。
『そうか……。天帝に会いに行かねばな』
ラディウスは、天を仰ぎルーチェと共に消えようとするが……。
『ちょっと待って、ラディウス』
光ちゃん……ルーチェが止めた。
『里美……いいえ、メグ。ありがとう、私を受け入れてくれて。貴女がこの世界最後の聖女様よ』
ルーチェの言葉に皆ざわめく。
『竜魔王という瘴気の元は消え去ったの。後はメグが生涯をこの世界で過ごし、天寿を全う出来たら瘴気も魔物もいなくなるわ。この世界に聖女も勇者もいらなくなるの』
ルーチェは、ラディウスに寄り添いながらさらに言う。
『天帝に逆らって竜魔王になったラディウスを、元の姿に戻し連れ帰るのが天界に戻れる条件だったの。ありがとう、皆のおかげで願いは叶ったわ。女神の契約は残しておくけど、後は人間の理 の中で自由に生きていってね。私達は天界で見守っているから』
言いたい事だけ言ってルーチェはラディウスと消えてしまった。
さすが女神。相変わらず自分勝手だ。また、何かやらかして落とされてこないでしょうね。
そんな疑問が、頭に浮かんでしまった。
そんな私たちから離れたところで、デイミアンだけがエミリーの遺体をマントのような布でくるんでいた。
目は見開き、胸には穴が開いている。どこもかしこもおびただしい血の跡が残り、服からはまだ血が滴っている。
「あの……」
私はエミリーの遺体に手をかざそうとした。
「やめなさい、メグ」
「さわらないでください」
ダグラスとデイミアンの制止がほぼ同時に入った。
「でも……」
「エミリー様はこの状態で連れ帰ります。各国の王室にエミリー様が聖女だと認めてもらう為、リーゼモルツの冒険者たち……勇者と英雄の末裔を利用したのです。そのままの遺体を見ないと納得しない国もでてきましょう」
デイミアンは、そう言ってエミリーを包み込んでしまった。
血がにじみ出る事も無く綺麗に包み込めたところを見ると、この布には防腐と状態維持の魔法がかかっているのだろう。
「それに、あなた方がここにいると言う事は、デリック殿下は王位争いに負けたのでしょう?」
「ああ、そうだ。たとえここでエミリーが生き返っても、城に帰れば聖女を殺害しようとした罪でデリック殿下と一緒に処刑されるだけだ」
ダグラスは、デイミアンだけでなく私にも言っていた。以前、私が女王陛下に『処刑させるために生き返らせたりはしない』といった事を覚えていたのだろう。
「それにな。俺はルーチェの計画を知っていて黙ってたんだ。メグが責任を感じることはないさ」
ダグラスがうつむいた私の頭を撫でてくれるけど、とても前を見る気にはなれなかった。
「聖女メグ……いえ、マーガレット様。この上頼みごとが出来る立場では無いのは承知しておりますが、私の策に乗ってはもらえないでしょうか?」
泣きそうになっている、私にデイミアンが提案 をしてきた。
とても、承諾出来るような内容 では無かったのだけど。
ダグラスもクラークもハワードも、肩で息をしている状態でなかなか呼吸が整わない。
気が付いたら竜魔王から出ている光の粒子が洞窟いっぱいに広がっていた。もう、聖女の結界も消えてしまっている。
やがて光の粒子になったドラゴンの形をしたものは、男性の形へと変化を遂げていった。
『ラディウス』
私の中から、光ちゃんが飛び出して行った。
まさか私の中から光そのもののような女性が出てくるとは思ってもいなかったのか、クラークもハワードも唖然として見ている。
光ちゃんは、倒れてしまっているラディウスに縋りついて、もう目が開けられないくらいの光を放っていた。
どれくらい経ったのだろう。長い時間だったかもしれないし、一瞬だったのかもしれない。
気が付いたら竜魔王……ラディウスが目を開いていた。
『ルーチェ』
『ラディウス。やっと条件がそろったの。これで私達、天界に帰れるわ』
『条件?』
そう言ってラディウスは、私を見て……、そして、壁に激突して打ち捨てられたままのエミリーを見た。
『そうか……。天帝に会いに行かねばな』
ラディウスは、天を仰ぎルーチェと共に消えようとするが……。
『ちょっと待って、ラディウス』
光ちゃん……ルーチェが止めた。
『里美……いいえ、メグ。ありがとう、私を受け入れてくれて。貴女がこの世界最後の聖女様よ』
ルーチェの言葉に皆ざわめく。
『竜魔王という瘴気の元は消え去ったの。後はメグが生涯をこの世界で過ごし、天寿を全う出来たら瘴気も魔物もいなくなるわ。この世界に聖女も勇者もいらなくなるの』
ルーチェは、ラディウスに寄り添いながらさらに言う。
『天帝に逆らって竜魔王になったラディウスを、元の姿に戻し連れ帰るのが天界に戻れる条件だったの。ありがとう、皆のおかげで願いは叶ったわ。女神の契約は残しておくけど、後は人間の
言いたい事だけ言ってルーチェはラディウスと消えてしまった。
さすが女神。相変わらず自分勝手だ。また、何かやらかして落とされてこないでしょうね。
そんな疑問が、頭に浮かんでしまった。
そんな私たちから離れたところで、デイミアンだけがエミリーの遺体をマントのような布でくるんでいた。
目は見開き、胸には穴が開いている。どこもかしこもおびただしい血の跡が残り、服からはまだ血が滴っている。
「あの……」
私はエミリーの遺体に手をかざそうとした。
「やめなさい、メグ」
「さわらないでください」
ダグラスとデイミアンの制止がほぼ同時に入った。
「でも……」
「エミリー様はこの状態で連れ帰ります。各国の王室にエミリー様が聖女だと認めてもらう為、リーゼモルツの冒険者たち……勇者と英雄の末裔を利用したのです。そのままの遺体を見ないと納得しない国もでてきましょう」
デイミアンは、そう言ってエミリーを包み込んでしまった。
血がにじみ出る事も無く綺麗に包み込めたところを見ると、この布には防腐と状態維持の魔法がかかっているのだろう。
「それに、あなた方がここにいると言う事は、デリック殿下は王位争いに負けたのでしょう?」
「ああ、そうだ。たとえここでエミリーが生き返っても、城に帰れば聖女を殺害しようとした罪でデリック殿下と一緒に処刑されるだけだ」
ダグラスは、デイミアンだけでなく私にも言っていた。以前、私が女王陛下に『処刑させるために生き返らせたりはしない』といった事を覚えていたのだろう。
「それにな。俺はルーチェの計画を知っていて黙ってたんだ。メグが責任を感じることはないさ」
ダグラスがうつむいた私の頭を撫でてくれるけど、とても前を見る気にはなれなかった。
「聖女メグ……いえ、マーガレット様。この上頼みごとが出来る立場では無いのは承知しておりますが、私の策に乗ってはもらえないでしょうか?」
泣きそうになっている、私にデイミアンが
とても、承諾出来るような