第27話 無事王宮から帰って来れました……だけどね

文字数 1,818文字

 私たちは3日ぶりにお店に戻って来た。
 
 王宮の使用人たちは優秀だ。私がいなくても、ちゃんとお店を維持してくれている。
「おかえりなさい。メグ様」
「留守の間、変わりなかった?」
「ええ。新規のお客様が1人増えて……」
 ベンが説明をしだす。しばらくは、私もダグラスもそのお客の情報を訊いていた。

 そういえば、さっきの女神の光は世界中に見えていて、この街でもすぐ近くで見えていたはずなのに、みんな……町の人達も誰も騒いでない。
「今日、『聖女様が女神様の祝福を得る儀式』があったでしょう? 女神様の光とお声が聞こえたはずなのに、みんな静かなのね」
 
 私は、疑問に思ったことをお店で聞いてみた。
「一時期、騒ぎになっていたのを、騎士団の方々が鎮めてまわっていました」
 ボブは意外な事を言った。

「騎士団……が?」
「メグ様が、聖女だと認定されてもここで静かに暮らせるようにとの、女王陛下からのご命令にございます」
 そう言って、ボブもベンも私に跪いた。
 なるほど、先ほどの王宮での王弟殿下の言動は、本当に独断だったのね。

「立ってちょうだい。お客様が、入ってきたら何事かと思うわ」
 私は、慌てて言う。だって、様付で呼ばれるのだってどうかと思うのに……。
 ボブもベンも素直に立ってくれた。

「あら、メグ様。おかえりなさいませ」
 奥からクレアも出てきた。良かった、本当にみんなここにいてくれて。


 後は、私がこの世界にいるだけで、瘴気は払われ結界も徐々に強固になっていく。

 まぁ、それには何十年もかかるのだろうけど、私はちょっと裕福な平民として今の商売を生業(なりわい)にして、一生を過ごすだけ……。
 
           めでたし めでたし(ごめんなさい、ウソです。続いてます)↓




 


 …………と言うわけには、いかないわよね。やっぱり。いや、わかっていたけど。

 一週間も経たないうちに、私とダグラス宛に王宮からの呼び出しが来た。

「ルーブルシア王国が少し不穏な動きをしていてね」
 自身の執務室まで私たちを呼び出し、女王陛下がそう言ってきた。
 女王陛下は、自分のデスクに座り、私たちはその前に立っている。
「それで、私服の兵士が街中をうろついているのですか」
 そう言ったのは、ダグラス。さすがに一般の平民とは動きが違うので、気にはなっていたようだった。

 どちらが動いているのだろう。それによっても対応が変わってくる。
 だけど……
「女王陛下。かの国の王太子殿下は馬鹿ではありません。私を連れ帰りたいのであれば、こちらの国にまず打診があると思います」
「ほう? 聖女を街中で連れ去るようなまねはしないと?」
 ……いや、どんだけ愚かだと思われてるんだか。まぁ、浅慮(せんりょ)ではあるけど。

「動いているのが王太子側であれば、数日もすれば書簡が届けられましょう」
「ウイリアム王太子が動いているのであれば……だね」
 女王陛下が確認をしてきた。王太子の中身が変わる事もある……と。

「はい。動いているのが第二王子のデリック殿下だと、わかりませんが。今の時点で彼が動くことはまず無いでしょう」
 あの慎重で狡猾なデリック殿下は、王太子に先を譲るだろう。
「それで、どうするかね?」
「あちらが会いたいというのなら、会いましょう。その時は、王宮内に席を設けて頂けますか?」
 私は、ニッコリ笑って女王陛下に言う。

「あんな事があったのに、メグはまだ私を信じてくれているのだね」
 あんな事……王弟殿下が、私を王宮に留め置くために武力行使しようとしたことね。
「あれは、王弟殿下の独断でしょう? 女王陛下は、私が平民でいられるように配慮をしてくれているではないですか」
 女王陛下は、フッと笑った気がした。
「わかった。そのように手配しよう」

「あの、女王陛下。それとは別にこの前の儀式のときに倒れた方々は大丈夫でしたか?」
 そのままお亡くなりになったとかだったら、後味悪すぎるからこの際とばかりに、訊いてみたのだけれども。
「ああ。あれは……」
 なんか、女王陛下が遠い目をしている。なんで?
「憑き物が落ちたように、穏やかに過ごしてるよ」
「はい?」
「必要悪だと思って、放置していた連中だったのだけれどもね」

 あ~、黒い部分が消えてなくなりましたか……。
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