第50話 冒険者たちからの情報
文字数 2,009文字
「それで俺達が王宮に呼ばれた理由は、デリック殿下からの竜魔王討伐依頼だ。聖女様と共に竜魔王を討伐とまではいかなくても、封印してくれとの依頼だ」
「あなたたちに? 他の冒険者も連れて……じゃなくて?」
って言うか、エミリーを連れて行くの?
「そう、俺たちだけ」
「そんな無謀な」
瘴気を払える聖女も連れて行かず竜魔王の元に行くなんて。
「なんで、大国に挟まれた俺の国リーゼモルツ王国がどちらにも吸収されてないと思っているんだ?」
呆然とする私にクラークがそんな問いかけをしてきた。
「英雄王の国だからだろう? 竜魔王を封印した勇者も輩出しているよな」
「ダグラス……何で知ってるのよ」
つい私はダグラスに訊いてしまっていた。
「男なら一度は読んだことがある英雄譚だからな。子どもでも知っている話だ……それに」
「それに?」
「いや、何でも無い」
……なるほど、ダグラスが何を言い淀んだのか知らないけど、英雄譚自体は少年時代に誰もが読むような冒険物語ね。
「つまり……だ。俺たちはその末裔で、封印するだけの強さと力があると、デリック殿下から見込まれたわけだ。竜魔王さえ封印してしまったら、数百年は瘴気が抑えられる。そうすれば、聖女なんてお飾りで良いもんな」
クラークはそう言う。本当に勇者と英雄の力があれば瘴気はあまり関係ない。瘴気で体の動きが鈍っても、充分に強いから。
「そのかわり、人間同士の争いが始まるけどな。デリック殿下の思惑通り」
私がこの世界の常識ソフトを確認している間に、ダグラスが、そう言ってきた。
「実際、前回の大戦はアイストルスト王国が優勢になったところで、竜魔王の瘴気がまた漏れ出したんだろう? だからソルムハイム王国は反撃が出来なくなって、今の勢力図だ」
「そういう事だな」
ダグラスが言った事に、ハワードの方が相づちをうった。今のは、世界史の教科書にも載っていたから、貴族以上なら誰でも知っている……真面目に授業受けてたらだけどね。
「メグ、気を付けといた方が良いぜ。ダグラスの旦那はごまかしたがってるが、あんた相当危ないんじゃないのか? この国にいるの」
そう言ってきたクラークをダグラスがにらみつける。
「おっと、怖い怖い。でも、隠さない方が良いぜ、ダグラス。何も知らせないまま守れるものでも無いだろう?」
クラークが真剣な顔をして、ダグラスに言った。
「え……と、私が追放されたのにこの地にいるから?」
私がそう訊くとクラークが答えてくれた。
「それだけだったら、アイストルストの軍属になっている時点で手が出せないはずなんだがな。何か、聖女様の意向が入っているようだったぜ」
「本当にねぇ。あの聖女様? あの子本当に、人を人とも思ってない感じで嫌だったわ」
キャロルが私に言ってきた。
「私、あの子から睨まれたもの。ハワードの横にいただけなのに、『男にくっついて嫌な感じ』って言われたし。そのくせ、自分はクラークやハワードにべたべたしてくるし」
シンディーも、そう言ってきた。言外にあいつらも、まんざらでも無かったようだし……って言ってるよ。
…………それで、機嫌悪かったんだ。
「と……とにかく、俺たちは依頼を受けることにしたから」
女性陣の話をごまかすように、クラークは話題を変えた。
「倒せなくても、封印さえできればこの事態も収まるだろう?」
デリック殿下の思惑とは別に、これ以上犠牲者を出さないために、無理でも行くしかないって顔で言うから……私はもう何も言えない。
「無理しないで……とは、言えないけど……私が渡したポーションまだある?」
「あるけど、メグも持ってた方が良いんじゃないか?」
ハワードは、そう言いながら自分の赤のポーションを私にくれようとしていた。
「私は飲んでも無駄なの。焼け石に水って感じで……。私が回復させるのは重傷者ばかりだから」
聖女が使う強力版エリアヒールにすら足りない、あんな魔力回復のポーションなんて。
「そうか」
残念そうに、ハワードはポーションをマジックボックスにしまっていた。
そんなハワードを横目に見ながら、クラークが言ってくる。
「それでな、次に会う時はメグが危ない目に遭っていても俺たちは庇えない。あっちの聖女様に付いて行くことになるし、竜魔王を倒す前に体力も魔力も使えないから」
目の前で私が殺されることがあっても、黙殺するってクラークは言っていた。
正しい判断だわ。
「それでいいわ。大丈夫、その時はスパッと見捨てていってちょうだい。別に恨んだりしないから」
私は笑顔で言う。
「本当、メグが聖女様だったら良かったのにな。そうだったら、俺たちの保護対象になるのに」
そう言いながら、クラークは私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。だから、そういうのは良いから、やめて。
「あなたたちに? 他の冒険者も連れて……じゃなくて?」
って言うか、エミリーを連れて行くの?
「そう、俺たちだけ」
「そんな無謀な」
瘴気を払える聖女も連れて行かず竜魔王の元に行くなんて。
「なんで、大国に挟まれた俺の国リーゼモルツ王国がどちらにも吸収されてないと思っているんだ?」
呆然とする私にクラークがそんな問いかけをしてきた。
「英雄王の国だからだろう? 竜魔王を封印した勇者も輩出しているよな」
「ダグラス……何で知ってるのよ」
つい私はダグラスに訊いてしまっていた。
「男なら一度は読んだことがある英雄譚だからな。子どもでも知っている話だ……それに」
「それに?」
「いや、何でも無い」
……なるほど、ダグラスが何を言い淀んだのか知らないけど、英雄譚自体は少年時代に誰もが読むような冒険物語ね。
「つまり……だ。俺たちはその末裔で、封印するだけの強さと力があると、デリック殿下から見込まれたわけだ。竜魔王さえ封印してしまったら、数百年は瘴気が抑えられる。そうすれば、聖女なんてお飾りで良いもんな」
クラークはそう言う。本当に勇者と英雄の力があれば瘴気はあまり関係ない。瘴気で体の動きが鈍っても、充分に強いから。
「そのかわり、人間同士の争いが始まるけどな。デリック殿下の思惑通り」
私がこの世界の常識ソフトを確認している間に、ダグラスが、そう言ってきた。
「実際、前回の大戦はアイストルスト王国が優勢になったところで、竜魔王の瘴気がまた漏れ出したんだろう? だからソルムハイム王国は反撃が出来なくなって、今の勢力図だ」
「そういう事だな」
ダグラスが言った事に、ハワードの方が相づちをうった。今のは、世界史の教科書にも載っていたから、貴族以上なら誰でも知っている……真面目に授業受けてたらだけどね。
「メグ、気を付けといた方が良いぜ。ダグラスの旦那はごまかしたがってるが、あんた相当危ないんじゃないのか? この国にいるの」
そう言ってきたクラークをダグラスがにらみつける。
「おっと、怖い怖い。でも、隠さない方が良いぜ、ダグラス。何も知らせないまま守れるものでも無いだろう?」
クラークが真剣な顔をして、ダグラスに言った。
「え……と、私が追放されたのにこの地にいるから?」
私がそう訊くとクラークが答えてくれた。
「それだけだったら、アイストルストの軍属になっている時点で手が出せないはずなんだがな。何か、聖女様の意向が入っているようだったぜ」
「本当にねぇ。あの聖女様? あの子本当に、人を人とも思ってない感じで嫌だったわ」
キャロルが私に言ってきた。
「私、あの子から睨まれたもの。ハワードの横にいただけなのに、『男にくっついて嫌な感じ』って言われたし。そのくせ、自分はクラークやハワードにべたべたしてくるし」
シンディーも、そう言ってきた。言外にあいつらも、まんざらでも無かったようだし……って言ってるよ。
…………それで、機嫌悪かったんだ。
「と……とにかく、俺たちは依頼を受けることにしたから」
女性陣の話をごまかすように、クラークは話題を変えた。
「倒せなくても、封印さえできればこの事態も収まるだろう?」
デリック殿下の思惑とは別に、これ以上犠牲者を出さないために、無理でも行くしかないって顔で言うから……私はもう何も言えない。
「無理しないで……とは、言えないけど……私が渡したポーションまだある?」
「あるけど、メグも持ってた方が良いんじゃないか?」
ハワードは、そう言いながら自分の赤のポーションを私にくれようとしていた。
「私は飲んでも無駄なの。焼け石に水って感じで……。私が回復させるのは重傷者ばかりだから」
聖女が使う強力版エリアヒールにすら足りない、あんな魔力回復のポーションなんて。
「そうか」
残念そうに、ハワードはポーションをマジックボックスにしまっていた。
そんなハワードを横目に見ながら、クラークが言ってくる。
「それでな、次に会う時はメグが危ない目に遭っていても俺たちは庇えない。あっちの聖女様に付いて行くことになるし、竜魔王を倒す前に体力も魔力も使えないから」
目の前で私が殺されることがあっても、黙殺するってクラークは言っていた。
正しい判断だわ。
「それでいいわ。大丈夫、その時はスパッと見捨てていってちょうだい。別に恨んだりしないから」
私は笑顔で言う。
「本当、メグが聖女様だったら良かったのにな。そうだったら、俺たちの保護対象になるのに」
そう言いながら、クラークは私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。だから、そういうのは良いから、やめて。