第8話 国外追放 国境への道のり
文字数 1,641文字
「ダグラス殿、降りてください。ゲートスケル公爵家に何と申し開きをすれば……」
勝手に馬車に乗り込んだダグラスに、父が馬車の外から焦って言っている。
ダグラスの実家は公爵家、同じ公爵家でもうちとは家格が違っていたので父の焦りようは、よくわかる。
「ダグラス様。父の言う通りです。どうか、考え直してください」
私も一生懸命、馬車を降りてくれと頼んだ。
いけ好かない男性だけど、私の為に爵位と近衛騎士という地位を捨てさせるわけにはいかない。
しかも、私の処分は国外追放。
瘴気の森が国境を囲っている以上、それは死刑を言い渡されたのと同じ事。
私の能力で、瘴気をなんとかできるのかもわからない。
そんな運命に、他人を巻き込もうとは思わなかった。
「俺は公爵家の次期当主候補では無いし、爵位なんかいらないさ。マーガレットがいるから、貴族でいただけだ」
そう言って、ダグラスは私の髪を撫でた。
そして、ダグラスの出してくれという合図で馬車は出発してしまう。
馬車の中で泣こうと思ったのに、当てが外れた。
だけど、ダグラスのぬくもりは、私を安心させてくれている。
ふと、思いついたことを訊いてみる。
「ダグラス様は、エミリー様の事が好きだったのではないのですか?」
ダグラスの顔が怪訝そうなものに変わった。
「聖女様だろ? 近衛騎士団の警護対象者だ」
「それだけ?」
いや、本当にそれだけ?
「他に何かあるのか?」
「ゲートスケル公爵家も一応王室の血が流れてますよね。聖女様との婚姻の話も持ち上がる可能性があったのではないでしょうか?」
「何であんな頭の軽い女と……」
ダグラスは、そう言って即座に口を押さえる。
そっか……それが本音か、まぁダグラスらしいけど。
「それよりな。お前のその言葉遣い何とかならんのか」
「変でしょうか?」
「平民の女はそんな言葉遣いしないだろう」
ため息交じりに、ダグラスは私に言ってきた。
確かに……エミリーの言葉の方が平民に近いだろう。
あれはあれで、変だけど。
「そうね。こんな感じで良い? お兄さん」
少しダグラスがムッとする。
「俺は、お前の兄にはならん」
「そうね。ダグラス」
私の保護者なんて嫌だよね、確かに……。
「お前の名前……メグで良いか? マーガレットの愛称にメグってのがあったろう」
ああ、Margaret からのMag ……ね。
「平民の名前としては良いと思うわ」
そんな風にこれからの事を2人で話し合っていた。
死なない事を前提にして。
私は馬車の中で、わが身の行く先を思って嘆く時間も無く。
王宮の役人から声をかけられる。
「国境に着きました。これより結界のこちら側に戻ってくることの無いように」
私とダグラスは、馬車の外に降りる。
他の国と違い外壁も無く、前聖女が張ったという結界のみが見えていた。
その向こうは、うっそうと茂った森。なにやら、おどろおどろしい気配がする。
私たちが、立ち止まって結界の先を見ているのを何と思ったのか、役人が跪いて言う。
「なるべく、瘴気が薄いところを選ばせていただきました。すぐそばには、各国の王族の方々の通る道があります。申し訳ございません、レヴァイン公爵令嬢様。私の立場ではこれが精一杯でございます」
「いえ、お心遣い感謝いたします。貴方の未来に幸多かりきこと、お祈り申し上げます」
私は、名も知らぬ役人の頭に手をかざした。すると、彼の頭に光の雫が落ち全体を包み込んだ。
「レヴァイン公爵令嬢様。貴女こそ、聖女様」
学園の夜会の事を噂で聞いたのであろう。そう言って、役人は立ち去った。
結界を通って外に出ろとは、言われたけど。
この結界、私たちが通ったら多分壊れちゃうよね、それにあの森……。
そう思いながら、私は結界の手前でたたずんでしまった。
勝手に馬車に乗り込んだダグラスに、父が馬車の外から焦って言っている。
ダグラスの実家は公爵家、同じ公爵家でもうちとは家格が違っていたので父の焦りようは、よくわかる。
「ダグラス様。父の言う通りです。どうか、考え直してください」
私も一生懸命、馬車を降りてくれと頼んだ。
いけ好かない男性だけど、私の為に爵位と近衛騎士という地位を捨てさせるわけにはいかない。
しかも、私の処分は国外追放。
瘴気の森が国境を囲っている以上、それは死刑を言い渡されたのと同じ事。
私の能力で、瘴気をなんとかできるのかもわからない。
そんな運命に、他人を巻き込もうとは思わなかった。
「俺は公爵家の次期当主候補では無いし、爵位なんかいらないさ。マーガレットがいるから、貴族でいただけだ」
そう言って、ダグラスは私の髪を撫でた。
そして、ダグラスの出してくれという合図で馬車は出発してしまう。
馬車の中で泣こうと思ったのに、当てが外れた。
だけど、ダグラスのぬくもりは、私を安心させてくれている。
ふと、思いついたことを訊いてみる。
「ダグラス様は、エミリー様の事が好きだったのではないのですか?」
ダグラスの顔が怪訝そうなものに変わった。
「聖女様だろ? 近衛騎士団の警護対象者だ」
「それだけ?」
いや、本当にそれだけ?
「他に何かあるのか?」
「ゲートスケル公爵家も一応王室の血が流れてますよね。聖女様との婚姻の話も持ち上がる可能性があったのではないでしょうか?」
「何であんな頭の軽い女と……」
ダグラスは、そう言って即座に口を押さえる。
そっか……それが本音か、まぁダグラスらしいけど。
「それよりな。お前のその言葉遣い何とかならんのか」
「変でしょうか?」
「平民の女はそんな言葉遣いしないだろう」
ため息交じりに、ダグラスは私に言ってきた。
確かに……エミリーの言葉の方が平民に近いだろう。
あれはあれで、変だけど。
「そうね。こんな感じで良い? お兄さん」
少しダグラスがムッとする。
「俺は、お前の兄にはならん」
「そうね。ダグラス」
私の保護者なんて嫌だよね、確かに……。
「お前の名前……メグで良いか? マーガレットの愛称にメグってのがあったろう」
ああ、
「平民の名前としては良いと思うわ」
そんな風にこれからの事を2人で話し合っていた。
死なない事を前提にして。
私は馬車の中で、わが身の行く先を思って嘆く時間も無く。
王宮の役人から声をかけられる。
「国境に着きました。これより結界のこちら側に戻ってくることの無いように」
私とダグラスは、馬車の外に降りる。
他の国と違い外壁も無く、前聖女が張ったという結界のみが見えていた。
その向こうは、うっそうと茂った森。なにやら、おどろおどろしい気配がする。
私たちが、立ち止まって結界の先を見ているのを何と思ったのか、役人が跪いて言う。
「なるべく、瘴気が薄いところを選ばせていただきました。すぐそばには、各国の王族の方々の通る道があります。申し訳ございません、レヴァイン公爵令嬢様。私の立場ではこれが精一杯でございます」
「いえ、お心遣い感謝いたします。貴方の未来に幸多かりきこと、お祈り申し上げます」
私は、名も知らぬ役人の頭に手をかざした。すると、彼の頭に光の雫が落ち全体を包み込んだ。
「レヴァイン公爵令嬢様。貴女こそ、聖女様」
学園の夜会の事を噂で聞いたのであろう。そう言って、役人は立ち去った。
結界を通って外に出ろとは、言われたけど。
この結界、私たちが通ったら多分壊れちゃうよね、それにあの森……。
そう思いながら、私は結界の手前でたたずんでしまった。