第58話 牢獄からの解放

文字数 1,056文字

「ランラドフ様。私は小隊の皆様に合わす顔がありません」
 王宮を出て、馬に乗って小隊に帰ろうというところで、ランラドフと一緒に来ていた小隊の騎士たちに、私はそう言った。
 だって、私は庇ってくれた騎士たちを見殺しにしようとした。
 ランラドフの後ろに控えているディルランは、あの時にダグラスが言わなければ今頃失血のショックで死んでいたはずだった。

「私は、あの時私を庇って下さった皆様を見捨てようとしました。ダグラスの方を優先しようと……」
「メグ様はそれでも私たちを癒してくださったではないですか」
 ディルランはそう言ってくれるけど、私は。
「ダグラスが願わなければ、私は皆様を見捨てていました」
 顔を上げられない。握りしめた手は震えてしまっていた。

「それについては、こちらも同罪だな」
 ランラドフは平然と言う。
「僕も君たち……特に、ダグラスは死ぬかもしれないと思っていたのに、小隊の任務を優先した」
「それは、仕方ないことです。任務を優先するのは」
「そう、仕方がない。だから、良いんだ。メグちゃんが、ダグラスを優先しようとしても」

 私が顔を上げると、ランラドフの優しい顔が見えた。他の皆も優しい顔をしている。
「だけど、メグちゃんは皆にエリアヒールをかけてくれたのだろう? それがたとえダグラスの願いであっても……。そのメグちゃんに、合わす顔が無いと言われたら僕らはどうすれば良いのだろうね」
 任務の為とはいえ本当に見捨てる選択をしたのだから……とランラドフは言外ににおわせた。

「とりあえず、小隊に戻って来てもらえないかな?」
 ランラドフは、少し自信なさげに私に向かってそういう。
 いや、だから何でこの世界の男性はこういう時に、実家に妻を迎えに来たような言動になるのかしら……。
 ダグラスは、知らん顔して自分の馬……小隊の方が連れてきてくれたんだ……の準備をしているし。

「ほら、メグ。用意が出来たから馬に乗れ」
 ランラドフを無視して、私をヒョイッと抱えて馬に乗せ、自分も跨って来た。
 ダグラスは、私の意志確認すらしない……帰るのが当然とばかりに。

 それを見て、ランラドフに付いてきた小隊の人達は自分たちも馬に跨って、野営地に戻って行く。ランラドフも、私が戻るのが分かったのか安心した顔をして馬に跨り、私たちの横に着けてきた。

「戻ったら2人に相談……というか、頼みがあるのだけれど」
 ランラドフは先ほどまでの和んだ顔ではなく、真剣な顔をして私たちに言ってきた。
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