十二 借金未返済殺人事件④ 殺害計画

文字数 992文字

 二〇〇六年七月、初旬。
 前期の試験が終り、夏休みになった。関口虎雄と山田勇作と福原富代は大久保の山田勇作のアパートに集まった。
「バイトで金は貯まりそうか?」
 関口虎雄は困った顔で二人を見た。
「ああ、何とかなりそうだ。だけどあのヤロウ、許さねえ。絶対に・・・」
 山田勇作は、自分たちに非があるのを棚にあげ、拳を握りしめて怒りを露わにした。
「そうだな。謝罪させるか?」
 関口虎雄は、どうやって謝罪させるか考えた。ただ頭をさげさせるくらいじゃ、物足りねえ。いっそのこと、締めるか・・・。関口虎雄は柔道の絞め技を思った。

「謝罪だけでは、すまないわ」
 福原富代は宗谷慎司を八つ裂きにしたい気分だ・・・。借金してなければ半殺しにぶちのめしてやったのに・・・。
「奴を、締めあげるか?」
 山田勇作が宗谷慎司を痛めつけるつもりでそういった。
「締めあげるだけか?」
 関口虎雄はそういって、他にやり方があるんじゃねえかと思った。
 山田勇作がいう。
「それたげじゃあ、すまねえな・・・」
 痛めつけるのは簡単だ・・・。だが、俺たちが慎司のアパートへ出入りしたのは住人と管理人に知られてる。誰が慎司を痛めつけたか、すぐバレル・・・。
 金で誰かにやらせるか・・・。いや、俺の手でやらなきゃ、気が修まらねえぞ・・・。とはいうものの、どうやって締めあげるか・・・。

「勇作。八月二日の水曜に車を用意しとけ。四日の金曜にオレが慎司を呼びだす・・・」
 関口虎雄は気味悪い笑いを浮かべた。山田勇作は関口虎雄の笑いに不吉な思いを感じた。
「まさか・・・」
「その、まさかかも知れねえぜ・・・。
 いいか。ヤツにさんざん飲ませるんだ。酔っぱらったら車に乗せて、実家の近くに、試験牧場を作ってんだろう。あそこに埋めりゃいい。
 なあに、誰にもわからねえよ。信州の山ん中なんてそんなんばっかだ。ハッハッハッ」
 関口虎雄が不適な笑いを発した。勇作は驚いて関口虎雄の顔を見た。
「まさか、生き埋めにするんじゃねえよな?」
「車ん中で、落とす・・・。
 運が良けりゃ、目が覚めて土ん中からでてくるさ。
 そうでなきゃ、落ちたまんま、気持ちよくあの世行きさ・・・」
 関口虎雄は柔道三段だ。
「いんじゃないの・・・」
 福原富代があっけらかんとそういった。
「よし、それでゆこう」
 山田勇作も同意した。
 宗谷慎司が話した腹いせの一言は三人に激しい殺意を喚起していた。
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