二十一 奥山事件⑤ 捜査

文字数 830文字

 宗谷家に一番近いのは山崎家だ。宗谷家の悲鳴は他家へ聞こえていなかった。

 誰も宗谷家に来ないまま一時間以上がすぎた。
 ようやく、警察車両がサイレンを鳴らして村道を走ってきた。宗谷家の近くの村道に停車して捜査員と警官が降り、屋内を投光機で照らして捜査が始った。
 駐在が山崎聡平に近づき、
「聡平さん、家で経緯を聞かせてください。調書を書かにゃならんので・・・」
 山崎聡平を山崎家へ連れていった。
 山崎聡平にとってその方が気楽だった。いつまでも雨の中に立ってはいられない。一杯、飲んで冷えた身体を温め、早く布団に入りたかった。

 自宅に着くと、山崎聡平は駐在を台所へ連れて行った。
「早えとこすませてくれ。二時間ほど前に、布団の中で変な声を聞いたんだ。
 起きてトイレの窓から見たら、あの家の雨戸が外れてるように見えた。ガラス戸も開いたままで、廊下に人が倒れてるように見えた。
 見に行ったらあの始末さ。そいで電話したんだ。
 他には何もねえぞ・・・」
 山崎聡平はそういって二つのグラスに冷や酒を入れた。
「気付け薬だ。駐在も飲め・・・」
 山崎聡平はグラスを手に取って一息に飲み干した。
「本官は仕事がある・・・」
 駐在はグラスをチラチラ見ている。
「酒の臭いがするぜ。一杯やって寝たばっかだろう?」
 山崎聡平は駐在の思いを読んで冷ややかにそういった。
「まあ、そんなところだな・・・」
 駐在はグラスを取った。飲みながら調書を書きはじめた。
「捜査にいかなくていいんか?」
「ゆんベ飲んでて、酒が抜けてねえと話してある・・・」
 駐在は調書を書きつづけた。

 警察の捜査で、宗谷家の九人全員が福原富代の弟の政則に殺害されて政則は自殺した、と伝えられた。警察はそのように発表したが、信州信濃通信新聞社のその後の調査で、殺害されたのは七人。二人が行方不明になったらしいとされた。
 その後。殺人があった奥山村は有名になった。
 村人たちはこんな村にはいられないといって村人は離散し、村は廃村になった。


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