第36話 旅路

文字数 2,624文字

 甘い声をあげながら、快感に体をくねらせているリリスの乳房を揉みながら、“やはり美しいな。”と、その肉体を見下ろしているゴセイの目には、左右に、まだ快感の余韻に浸るメドゥーサとマリアも入っていたし、その耳にはセンリュウ達の戦う音、声も、リリスの甘い声とともに入っていた。
 部屋の外のことは、あまり心配は、していなかった。特にセンリュウの戦闘能力なら、他の部下達を援護しながら、この館の兵士全員と相手にしても十分だと計算していた。他の者達も、彼女にあまり手間をかけることなく戦えると踏んでいた。それに、メドゥーサとマリアは、この状態でも魔法で彼らを援護しているはずだし、リリスに至っては、魔法が自動発動して部屋に結界を張っている。
 リリスの声と動きが一段と高まり、そして止まり、一歩遅れてゴセイの動きが止まった。二人の深呼吸が終わった。
「じゃあ、ぼくはそろそろ行かないと…。」
「ぐずぐずしてると、私の分がなくなりますからね。」
 メドゥーサとマリアが、そう言ってのろのろと起きだした。
「そうだな。」
 リリスが目を開けた。
「ああ。」
 リリスとゴセイも、飛び起きた。4人が、武装して飛び出た時には、相手の数は半分以下、逃げ腰になっていた。
 国境に面するカブール州の州都カラシにある知事の屋敷に、隣国チムールへの入国準備のためゴセイ達は昨日から滞在していた。そして、今、その知事の兵士達の襲撃を受けているのである。ラシードの特許状は、通過する先々の知事からの便宜を受けることができて、確かに役に立ったが、旅の安寧にはあまり役立たなかった。旅立ち三日目には襲撃があり、ここに着くまでにさらに三回あった。知事自ら兵を動員しての襲撃は、流石に今回が初めてだったが。あてがわれた離れを、びっしりと兵が、魔導士が取り囲んで、一斉に攻撃してきた。館の敷地内なので、他の建物に燃え移ったり、誤って破損させては困るため、火炎や雷電、投石器などの飛び道具は差し控えたため、数を頼んでの剣、槍、対人魔法攻撃での襲撃となった。ただし、特大の火球などを飛ばしてもリリスの防御結界で消滅してしまっていたのだが。
 4人が出てきたのを見て、ラファエロ達は安堵の表情を見せたが、センリュウは、“もう出てきたのか。”と残念そうな表情を見せた。が、直ぐに、状況を簡単に説明した。彼女も、ゴセイが全て把握していることは解ってはいたのだが。建物の中に侵入した兵は返り討ち、外に押し返して、センリュウを除いて、入り口付近で防戦、センリュウだけが外に出て、縦横無尽に戦い、時々、苦戦する出入り口等で戦う面々を、彼女を避けて突入する兵達もおり、彼らとラファエロ達は激しく戦っていた、支援していた。死体になったり、動けなくなっている兵達の八割方はセンリュウがやったものだった。
「よくやった。指揮ぶりもよかった。」
とゴセイが褒めると、彼女は嬉しそうな表情を浮かべた。
「皆もよくやった。一気にいくぞ!」
 リリス、メドゥーサ、マリアは、その言葉の前に動き始めていたが。それを見て苦笑しながらも、ゴセイは剣を抜いた。
 そこからは、一方的だった。それでも、ゴセイが、ラファエロ達に加勢することは度々あり、彼に向かってくる騎士や魔道士と、何合も斬り結んだり、魔法のぶつけ合いをする場面が何度かあった。センリュウも、3人に負けずと戦いに酔ってしまっていた。“全く…。”と苦笑しながら、彼は超長剣を振るった。
“ほう~。それ程の格は高さはないが、聖剣やらを相手に、普通の剣で圧倒するとはな。あの魔道士などは、聖石を、一応の、使って魔法を増幅しているのに、押し勝っておるな。あいつは、本当に上達しておるな。”とリリスは、殺戮をしながら、微笑んでいた。
「小娘が、いい気になっているんじゃないよ!本当の魔法の恐ろしさを見せてあげるよ!」
 並んでいる女3人の1人が怒鳴った。
「小娘って、僕のことたよね?おばさん達?やっぱり若く見えるんだから。」
 メドゥーサが、悪戯っぽく、リリスとマリアを見た。リリスとマリアの反論が出てくる前に、彼女らの必殺の攻撃魔法が放たれた。が、それは簡単に無効化された。あ然とする彼女らに、
「まあ、我の方が若々しいがな。」
「年寄りの小娘さん、どうして欲しいのですか?」
「僕にやらせろよ。後ろに控えている、その他の連中も含めてさ。」
「ああ、その程度の老けた小娘共を相手にするより、残って隠れている連中を炭にした方がましだからな。」
とリリスはつまらなそうに同意した。
「私も、これはという者を死なない程度に回復させないといけませんから。ゴセイが選べるようにね。」
 悪戯っぽい視線をわざと向け、2人に睨まれながら、マリアも認めた。
「こ、この、売女共、口の減らない奴らめが!来なければ、こちらからゆくぞ!」
 先頭の女が叫んだ。
 3人、さらにその他のの阿鼻叫喚を聞きながら、知事はゴセイの剣を突きつけられていた。
“相変わらず楽しみながら…楽しみが、すぎるぞ。リリスは…まあ、使える奴を残してくれるだろうな?マリアは…助ける前に散々いたぶって、全く…。うん?転位魔法か?4人?”
 横合いから、突然2人の女戦士が現れ、ゴセイに斬りかかってきた。何合か交えることになった。彼の超長剣円を描くように迫る第一旋、高速度で迫ったが、それを剣と防御結界で受け止め、返す第二旋も受け止め、長く伸びてくるように見えた突きを受け流して、“今だ!”踏み込もうとした時、ゆっくりした第三旋が見えた。余裕で、先に自分達が斬る、突き刺せると確信していた。だから、自分達から血が噴き出していることが理解できなかった。彼女らが倒れると同時に、叫び声をあげて焼けただれた男2人が、現れ、そして倒れた。
「ふん。剣のみで闘おうとしていれば、もっとやれたのにな、残念だ。しかし、この若さでここまでとはな…さすがだ…世界は広いな、やはり、まだまだ知らぬことがあるな。で、もうないようだな、手札は、知事殿。それで、お前の選択は?」
 まだ、四十過ぎの男は、ワナワナ震えて言葉が出なかった。彼の頭に、筆頭行政官の男と副知事の女の顔が浮かんでいた。
 知事を助けようと、彼の前に立ったので斬り倒したが、チラッと見ると死んではいないようだった。“奴らにするか?黒幕達も知っているだろう。”
 彼の超長剣が一閃、知事は声をあげることもなく、頭のない首から血を噴き出して倒れた。


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