第33話 リバイアのしまつ2

文字数 2,547文字

「別に、こんなに大きくなんかしてくれなくてよかったのにな。」
 アルディーンの命令、好意、恩賞、贈り物として拡張、改修された浴室の馬鹿でかい浴槽に浸かりながら、ゴセイは文句を口にした。
 昼間なら、巧みに日の光を、夜なら月や星の光を取り入れ、明るさを調整するために、隠すように配置している人工の光源からの光も入ってくる。壁一面の色々の、鮮やかな色彩の幾何学、草書体文様のレリーフ、落ち着いていながら、華麗、趣味の良いものだった。アルディーンらしい造りだった。が、でかい、でかすぎる。“何人入ることを前提にしているんだ。”と唸ってしまう、さすがに。
「何人までならいいんだい?」
 泳いでいた、彼のまわりで、メドューサが、やはり泳いで戻ってきた、いそいで。
「私達…、3人で十分なくらい?泳げないくらいの、ですか?」
 やはりひと泳ぎしてから戻ってきたマリアが、悪戯っぽい笑顔で見上げた。
「ん?」
 リリスが黙っていたので、ゴセイが目で“如何した?”と問いかけた。
「あの糞女とその侍女達が来るぞ。侍女達だが、得物を隠し持っておる、魔石を持った連中もいる。凄い殺気だ、やる気だな。ただ、二人は少し違うようだぞ。」
 リリスは、少し嬉しそうな、絶対、これから起きる、いや引き起こす殺戮を心待ちにして、表情を浮かべていた。そのリリスの顔は、とても美しいと、ゴセイは思った。
 傍らのメドューサもマリアも同様だった。“さて、リバイアは如何するか、使い道は?”
 そのうち、脱衣室、これまた単なる脱衣室とはとても想像できない豪華な、広い空間で、装飾だけでなく、造り、素材全てが、だったが、からセンリュウとリバイア達との争い声が聞こえてきた。
「センリュウ、構わん。入れてやれ。」
「はい、マスター。」
 センリュウの声は、残念そうだった。
 裸身のリバイア、タオルで乳房の一部、下半身の一部は隠していたが、かえってそれが、よりエロチックなものを漂わせていた、とやはり裸身の彼女の侍女達が入ってきた。リバイアの表情は、勝ち誇っていた。その目は、ヨウに向けられた時には、媚を売るようなものだったが、リリス達に向けられた時には、敗者への侮蔑をたたえたものだった。“女として、あなた方は、負けたのよ!さあ、勝者に座を開けなさい、そして、退場なさい!”その気持ちを、彼女の侍女達の筆頭格と思われる犬耳の女が、彼女も、他の全ての侍女達も同様だったが、若く、魅力的だった、代弁するように、
「さあ、卑しい者はここから出なさい!ここは、主様と奥方がいるべきところです。」
と宣告した。リリスも、メドューサも、マリアも臨戦態勢に入っていた。ゴセイの強制がない限り、その行動を止められないところまできていた。彼は、平静な、大したことではないという調子で、宣告した。
「リバイア。私のリリス達を侮辱した罪で、処刑だよ、わかったな。」
 ゴセイの言葉に、リバイアは唖然としたが、自然な形でタオルを落とした、もちろんわざとだ。自分の魅力的な裸体を惜しげもなく見せれば、この窮地を挽回、逆転できると信じていた。 が、彼は動じることなく、
「もちろん、お前の侍女達も全員処刑だ。」
と続けた。唖然とする間は、彼女には与えられなかった。気がつくと、血が噴き出していたからだ、直ぐに意識も遠のいた。
 しかし、主の惨状に気付くことなく、彼女の侍女達は即座に反応した、戦いにだった、それは二通りだったが。
 もちろん、リリス、メドューサ、マリアも動いた。後方から、センリュウも参戦した。敢えて、ゴセイはセンリュウを止めなかった。“ここでも、彼女に我慢させたら、あまりに可哀想だからな。”
 侍女達は、どこに隠し持っていたのか、一人が収納魔法を使えたらしく、長剣を何本かだして、自分が手にし、仲間達に配った。しかし、他は巧みに隠していた短剣、メリケンサック、超小型の石弓、短槍、組み立て式、などを取り出して、構え、リリス達に向かおうとした。3人が魔法詠唱を素早く唱えた。リバイアは、彼女らの実力を信じていたのか、その表情には恐怖は感じていなかった。ただ、怒りのオーラが沸き上がっていた。
 二人の姿が消えた。そして、次の瞬間、ヨウの目の前に、その姿が現れた。その両手には、短剣が握られていた。
 すぐにリバイアは、怒りを忘れた。自分から血が噴き出すのを感じながら、意識を失ったのだ。彼女の介抱は無視して、侍女達は戦い続けた。いや、それは彼女が地を吹き出して倒れたことが、気が付かなかった、気づくだけの時間が与えられなかった、からだった。
 彼女達が気が付いた時には、既に長剣は折れ、まがりなりにも何と聖剣だった、短剣も槍も石弓の矢も弾き飛ばされ、火球も雷球も目の前で消滅、気がつかないうちに、主のリバイアと同様に、侍女達は血が噴き出して、痛みを感じて、動けなくなり、それからやっと意識が遠のくのを感じていた。
 瞬間移動魔法、極めて近距離でも、かなりの高度魔法で、しかも瞬時に発動させるのはかなり難しい。二人はかなりの魔法の使い手だと言えたが、この魔法自体は、その魔法波というべきものから出現位置を知ることができた。そのため、出現したと同時に、彼女らの出現位置に繰り出されたヨウの拳の一撃で、壁に叩きつけられて、血だらけになって意識を失っていた。
「ゴセイ。誰を生かすのだ?」
はリリスだった。
 全てが、ほとんど瞬殺だった、リバイアはもちろん、彼女の侍女達は、血を噴き出して、瀕死の状態だった。“せっかくの風呂が、血の海になって・・・汚しやがって…。”と思った、まず思ったゴセイだったが、
「まあ、全員、回復してやれ。ところで、リバイアは如何した?」
「三回、メチャメチャにしてしたけど、十回くらいしてから殺してしまおうと思っていたけど?」
「メチャメチャにしたあと、回復させて…。メドゥーサにしては寛大しすぎますけど、まあ、賛成ですわ。」
と、リリスも加わって、リバイアを、早く殺して、と嘆願するくらいになぶり殺しにしているメドゥーサとマリアに、
「もうそのくらいにして、回復させろ。」
と言うと、
「まさか~?」
と3人がハモったので、
「他の男の妻にしてやるんだよ。」
とゴセイは説明しながら、ため息を何度もついた。
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