第41話 旅路⑥

文字数 2,243文字

"どういうことだ?魔族もいるが?これも人造なのか?それとも魔王が人造神を得て、あるいは見つけて操っていたのか?"ゴセイは、地下神殿の中、その大広間、多分祭壇、祈りの場、集会場である場所に立って、少し頭を抱えた。そこには、人造神の他に魔王と感じさせる魔族とその親衛隊と思われる者達が仲良く並んで、彼らを待ち構えていたからだった。
「このご時世、神と魔王が仲良く手を取り合っているのか?それはそれでいいことだが、その秘訣でも教えていただけないか?」
 人造神からも魔王からも一言も発することはなかった。
「私が答えよう。愚かなる者よ。」
 魔王の後ろに、小柄な男、いや女、獣人の姿の少女が座っていた。魔王が、体をずらしたので見えるようになった。
「奴も魔王達と同様な、人造神に似た感触を感じる。あの小娘みたいのが一番新しい、少しの差で魔王どもだな。」
 リリスが囁いた。そうか、カークはなんとなく分かったと思った、そんな気がした。"しかし、自動的に蘇ったとしても、彼らが世界の和約に反対する理由がわからない。"
「何者かと尋ねてよろしいですかな?」
 ゴセイは、心持顔を上げるように少女を見据え、言葉とは裏腹な、やや傲慢に見える態度を敢えてとってみせた。人造魔王以下の魔族約100人、人造神数十人が身構えた。それはゴセイの後方に控えた、彼の部下たち同様だった。リリス、メドゥーサ、マリア、センリュウはとうに臨戦態勢をとっている。それは、ゴセイも同様だった。
「我は創造神だ。」
"そうきたか。自分以前の滅びた神々の遺産である神を見つけた、やはり滅びた神々がそれを参考に人造魔王達を作った。その統括として、この獣神を創造神として作ったか?何を創造するのか?新しい世界の人間、新人類とかか?"
「創造神としての目的も尋ねてもよろしいか?」
「分かり切ったことを。」
 吐き捨てるように言ってから、
「この者達の下に新たな人間達を創造する。だからこそ、この滅びるべき世界の住人が、下手に魔族と人間・亜人、人間達の間であっても共存などとほざかれては困るということだ。お前たちは、本能のまま、愚かしい本姓のまま、争って滅びるのだ。」
「嫌ですね。お断りします。私達は、まだまだ生きていたいのでね。」
 彼は、両手を広げたポーズをとった。
「それでは、仕方がないようだ。お前たちの運命は決まった。」
「それこそお断りしますよ。私は、当面、ナポリ王の馬鹿に付き合うつもりですし、その後、恐怖と暴力で支配するつもりです、この世界を。その世界を潰させたくありませんからね。」
「お前はもっと利口な奴かと思ったが、何を言いたい…、理解できない…殺れ!」
 彼女には、彼の後半の言葉を理解する、いや考える能力が与えられていなかったのだろう。
「行くぞ。」
「少しは残してやるぞ。」
「偽魔王達は僕がやるからね。」
「全て私の・・・仕方ありませんね。」
「私が、やってもいいんですよね。」
両者は一斉に動いた。
 マリアは人造神殺しを譲るまいと、メドューサは人造魔王達の殺戮を一人でやろうとしたが、人造魔獣、神獣も繰り出されたこともあり、リリスとセンリュウの介入を妨げることはできなかった。ゴセイは、4人以外の部下たちの援護にまわり、かつ、これはと思う人造神、人造魔族を助け、死ぬぎりぎり前で、自分の奴隷とすることに専念した。ゴセイが、あやうく魔槍を突き刺されかけた魔導士の女を助け、光の波動魔法をまとわせた超長剣の三閃で、アマゾネスのような人造神を切り倒した、その魔法で傷口の再生が困難だった、時には、全てが終わっていた。残っているのは、人造獣神、自称創造神だけだった。
「力はあるか?」
「ないな。雑魚どもにまかせて・・・、女神様がおるな。」
とリリスは、マリアの方をにやっと見た。黙って、震える創造神に歩み寄るマリアに、
「任せる。だが、知識は引きずりだしておけ。」
「わかっていますわ。脳を引きずり出して、内臓もかきだして、全ての知識を取り出してから殺しますから。」
 しばらくの間、悲鳴が響き渡ることになった。
「建物内の罠とか・・・動きだすものはないな?」
「あったが、もう止めている。」
とリリス。
「こいつらに案内させるんだろ?ぼくが動ける程度に直しておいたよ。」
 メドューサが寄り添いながら囁いた。
「ああ、頼む。気が利くな。おい、お前も来い。」
 先日助けて奴隷化した人造神を呼んだ。
「気が利くのは我もだろう。」
 リリスがいつの間にか寄り添い、不満そうにしながらも、胸をはった。
「そうさ、当たり前だろう。」
 そのうち、マリアも傍にやってきた。
「さて、ゆっくりと中を見てゆくか。」 
「獣もどきの女の頭から、彼女を起動した連中がわかりましたよ。この中に入り込んだ連中、よくいる、こういう場所で金目のものをあさる連中ですわ。起動して、喰われたようですわ。そいつらの知識から始まったようですわ。また、さして広がりはないようですが、ティムールの宰相の一人が接触があったようです。まだ、そこまでですわ、多分。」
 マリアの説明に、"ティムールに伝えておくか?いや、薄々察しているか?あいつにまかせればいいか?" 
 ゴセイは、その地下宮殿を探検した後、奴隷となっていた人造神・魔族達、さらに、この地で得ていた部下たち、彼らも奴隷となっていた、を加えて、その管理をゆだねて、ティムールの推薦状を持って、さらに東方に向かった。
 ゴセイ達が、再びこの場所を訪れるのは1年近く後のことだった。
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