第35話 また旅立ち

文字数 1,045文字

「わ、私でいいのですか?」
 騎士ジプリールは、ヨウに向かって、興奮と不安から震えていた。彼の後ろで跪くリバイアとその侍女達が並んでいた。
「お前は、クロランド殿を補佐するため、補佐できる者として選んだ。そのお前の妻に、彼女の妻として彼女を支えることのできる女を選ぶのは当然だろう。大丈夫だ、心配するな。彼女はお前とともに、お前とだけ歓喜を尽くすように命じている。まあ、同様にお前にも命じるが。だから、二人して、楽しく組んずほぐれつして睦み合い、励めばいい、その上で、クロランド殿を補佐し、助けるのだ、光と闇の両方からな。」
 堂々とした体格ながら、端正でまあまあ甘い顔立ちの30近くの騎士ジプリールは、嬉しいような、困ったような、期待するような顔をしながらも、
「分かりました。」
と頭を下げた。リバイアというと、妖艶な微笑みを浮かべながら、
「よろしくお願いします。」
とジプリールに向かって、頭を下げた。 
「あの…どういうことでしょうか?」     クロランドは、当然ありがた迷惑だという顔をした。
「クロランド殿。あなたは、美しき武人です。ですが、人は、光と闇の両方に対応しなければならないのです。あなたのような立場の方は、なおさらです。だからこそ、全てにわたり、あなたを補佐する、あなたの妻としての補佐もできるように、ジプリールとリバイアを夫婦としたのです。」
「はあ~?」
 そして、一方、
「なんと、わしの贈り物をむげにしおって、このバカ者が!はっはっは…。分かった、分かった、許してやるわ。さすがに、ゴセイ・ミョウ・ヨウ、面白いことをするのを。まあ、その3人がおるからな、はっはっは…。」
“全く、大したじいさんになったものだ。”“全く、あの小僧が、どう間違ったら、こんな爺になるのか?”ゴセイとリリスは、少し憎々しげに、少し面白そうに、少し感慨深そうに、少し感心しているふうに笑顔を見せた。それを見て、アルディーンも目を伏して懐かしそうな表情を見せていた。自分達の入り込めない3人の時間の共有に、メドゥーサとマリアは、面白くなさそうな顔をしながらも、何も言わなかった。
 それから数日後、準備を終えたゴセイ達は、アルディーンの領地内での世話、援助を受けることが記された特許状と各国皇帝、王などへの紹介状を手にして、クロランドとリバイア妻夫らに見送られながら、旅立った。
「それがあれば、我が領内は安全じゃが、まあ、正当防衛、過剰防衛も許す。」
とアルディーンラは意味深な笑ったが、実際その通りになった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み