第30話 後始末

文字数 2,438文字

「ゴセイ!」
 分捕った三隻に戦利品への積み込み状況を見に行ったゴセイに、マリアが詰め寄るように、
「もう~、メドゥーサやセンリュウに言ってやってください。メドゥーサは、沈めた船の中身を適当に取って、適当に積み込んだんですよ。いらない物が多い事と言ったら・・・。必要な物を取り分けて、いらない物は捨てて、残した物を整理して、それぞれ別にして、壊れないように箱に入れたりして船倉にいれなければならなかったんですよ。しかも、三隻に適当にいれて~。センリュウは、落としたドラゴンの牙やら角やらを取って、後は解体しただけで、どさっとおいて行ったんですよ。これまた、置く船も、置く場所も適当なところは同じです。解体しなおして、必要な部位を取り出して、整理して、容器などに保管して・・・。床も血などで汚れているから掃除しないといけないし・・・・。そもそも、箱や容器の調達もしなければならなかったんですよ~。リリスは、一応必要なものを整理して、自分が残した船の船倉に入れてましたけど、場所とか、分類とかの配慮が雑というか・・・とにかく、整理し直す、置き換える・・・しなければならないんですよ。もう~、みんな私が。」
 彼に顔突き合わせながら、彼女は、まだまだ言葉が止まりそうもなかったので、ゴセイはやにわに彼女を抱きしめた。
「も、もう。これでごまかそうとしても・・・だめですわよ。」
 後半は、言葉が柔らかくなってしまった。
「すまないな。こういうことは、マリアに任せるしかないから・・・。私も手伝うから・・・。あと何割くらい残っている?」
 彼女の耳元で囁いた。
「まだ、1/3くらい残っていますわ。」
「では、二人で早くすませるか。」
 そう言って、すぐに抱きしめる手を放そうとはしないゴセイに、マリアも
「もうしばらく、こうしていてくださいね。」
と答え、しばらくして唇を重ねてきた。ゴセイはというと、それに応じて、彼女の希望に合わせて舌を絡ませて、唇をさらに強く押し付けた。
「早くすませるまでには、もう少し時間がかかるかな。旦那も、マリア様も相変わらずだ。」
と船乗りシンドバッドが、にやにやして二人を見ていた。
「マリア。ずるいぞ。この淫乱元女神。」
「・・・。」
「ゴセイ。・・・馬鹿な身の程知らずの海賊船どもが近づいてきているぞ。10隻といったところだが、どうする?我がこのまま沈没させてよいか?」
 頭の中で声が響いた。
「二隻見逃して近づけさせろ、後はリリスが撃沈してしまっていい、皆殺しにしていいぞ。二隻はメドゥーサが乗り込んで、数人の乗組員を残して殺していい。ところでリリス、金目のものや物資だが、ちゃんと取ってメドューサが担当する船に乗せろ。わかったか?」
「了解。」
「わかったよ~。」
「・・・・。」
「センリュウは周囲を調べていてくれ。」
 マリアの抱きしめる力は、なかなか緩まなかった。
 この後、ご丁寧に海賊船団は、もう一回襲撃してきた。もちろん、戦利品を載せる2隻とそれを動かすのに必要な船員を除いて、撃沈、皆殺しにした。計10隻の船団になってしまったが、その後始末はシンドバットに任せた。二人のシンドバッドは相談の上、目的地の港で、5隻は売り払い 
、2隻を加えることにした。それをゴセイに報告し、ゴセイは許した。一連の戦利品の売却での利益の分配は、何時ものようにしてかまわないとゴセイは言った。
「かしこまりました。」
と頭を下げた二人のシンドバッドは、さらに、
「また、いい話を作家のシンドバッドにできますよ。」
「奴も喜んで、筆を存分に振るわせるでしょうよ。」
 三人で笑いあった。
「売り込み先別の整理と帳簿つけで忙しくなりますな。」
「元魔族や元海賊の船乗りをしごいていかないと・・・こちらも忙しくなりますよ。」
「忙しくしてくれ。その間はゆっくりさせてもらうさ。ん?なんだ?」
 ニヤニヤしながら両シンドバット達は、
「ゆつくりですか?・・・旦那は、そうしてもいられないのでは?」
「リリス様も加わって・・・。その話もどうか・・・こっちの方が喜ばれ・・・。」
 呆れて笑うヨウに対して、両シンドバットは、青ざめていた。
「我が加わってなんなのかな?」
「何の話がほしいんだろなあ?」
「喜ばれる話とは、どういうものですかしら?」
 肩に痛みを感じ、耳元で囁かれる声。
「お前たち、シンドバット達は忙しいんだ、揶揄うな。私は船室で休むから。」
と背を向けて歩き出すと、慌てるようにリリス達3人が続いて、彼にまとわりついた。
 ホットするようにため息をついた二人に、
「私の活躍も忘れずに伝えろ。」
とのセンリュウの声で,
一瞬また二人の体は硬直した。
「人間どもが、読んで喜ぶ、どんなことを二人にしたのだ?」
「まあ、淫乱な元女神様のことだと思うな。」
「いいえ、下品な元魔王様のことですわ。」
 にらみ合う3人を、引っ張るようなヨウは、甲板の下に消えていった。それから、港に入るまでの間、天候も含めて穏やかな、何もない日々が過ぎた。
 港につくと、既に商人のシンドバッドの手配した輸送業者とゴセイの、この地の配下らしい10人ほどの男女の戦士達が待っていた。
 神聖皇帝からの贈答品、航海の途中で得た戦利品のうち贈答用に選んだ品、一部売却が終わって得た金銀銅貨幣、食糧などの積み込みに数日かかったが、何事もなく過ぎ、ゴセイ達は出発することになった。
 両シンドバットは、笑い顔ではあったが、名残惜しそうに涙を浮かべていた。それでも、
「どうも怪しい連中が、単なる盗賊とは見えない連中でしたが、しきりに周辺にいましたが、先ほどいなくなりました。」
と報告し、
「義兄弟のシンドバッドのために、是非面白い話をお願いしますよ、旦那。」
と軽口を忘れなかった。
 輸送隊とラファエロ達を含めた10数人を引き連れて、ゴセイはリリス、メドゥーサ、マリア、センリュウを連れて出発した。はじめの数日は何もなかったが、遠方に単なる盗賊団とは思えない騎兵の一隊、約2千が現れた。
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