【2・猫の人と中の人】ネカマ……じゃないよね?2

文字数 2,161文字

Flaw:ありがとうございます!でも、めんどくさいってwもしかしてオジサン?
Alphonce:説教臭いってよく言われますが少なくとも外見的には25才くらいですよw
Flaw:外見的ってwwwじゃあ、フレンド登録、お願いしていいですか?
Alphonce:はい、喜んで!
Flaw:じゃ、ここで落ちます おやすみなさーい
Alphonce:あーーーー、まったまった! ここじゃだめ。安全な所まで戻らないと、いきなりログインした場所に敵がいたら、また死んじゃうって!
Flaw:あ・・・そうでしたw
     * * * * *
あぶないあぶない、よかった、商社マンさんいてくれて

 ふぅ、と息を吐くと、ログアウトの解除をした。

 六十秒のカウントダウン中であれば、いつでも解除出来る仕組みだ。

     * * * * *
Flaw:ふう、危なかった。@三十秒くらいでしたw
Alphonce:よかった(^_^) 俺が街まで護衛するから、一緒に行きましょう。
Flaw:かえって迷惑かけてしまって、ごめんなさい(T-T)
Alphonce:いえいえ。気にしないで。ここじゃみんなそうやって助け合って生きてるんだから
(助け合って生きてる……。まるで――)
Flaw:まるで、ほんとにここに住んでるみたいに言うんですね
Alphonce:ああ半分そんなもんですよ。時間的にじゃなくて、気持ち的に、というか。
Flaw:気持ち的に、ですか?
Alphonce:あはは、廃人の戯れ言なんで聞き流して下さい。はい、行きますよ!
     * * * * *

 FlawはAlphonceの後にぴったりくっついて、雪道をざくざくと歩き、途中気配を消す魔法などをかけてもらいつつ、巨人や魔法生物などの間をくぐって、街までの洞窟を歩いていった。


 自分一人でこの洞窟を抜けたときは、いつ敵に見つかるかと必死だった。なのに今は全ての脅威を素通りしている。

 彼女はちょっとした優越感に浸っていた。



     * * * * *

Flaw:私もね、似たようなこと考えてました
Alphonce:似たような事って? どんな?
Flaw:私も『気持ち的に』ここに住んでる、って

     * * * * *



 入院生活で自由の少ない彼女にとって、思うままどこにでも行かれるこの世界は、とても魅力的だった。

 気が付けば、心が世界に入り込んでいることも少なくなかった。


 聞こえるはずのない川のせせらぎや、踏みしめる枯れ草の感触、草原をわたる風が髪を揺らす感触、湿った霧の立ちこめる森の匂い……。


 どれもリアルではないけれど、自分の意思で見て歩いている場所だからこそ、あると感じられることもあった。



     * * * * *

Alphonce:え? ・・・それはマズイ傾向かもw 足洗えなくなりますよwww 早く他の楽しみ探すことをオススメします(ォィ)
Flaw:洗えなくっていいんです。べつに。洗ったって、することないから。
Alphonce:ま、そういう危険性のある場所だ、ということだけ頭のスミに入れておいてもいいかもな、ってことで。(経験者談)
Flaw:はーい。センパイw

     * * * * *



 麗の最後の言葉に答えず、彼はそのまま道を急いでいた。

 実際、街へは僅かな距離を残すだけだったのだ。でもそれが、彼女には少し冷たく感じられた。

なんか気を悪くするようなこと……言っちゃったかなぁ。明日でもでメッセ流しとこ

 思いの外早く街に着いて、麗は安心したと同時に、少し寂しい気もしていた。

 別の誰かと一緒に行動する事自体、彼女にとっては貴重な体験だったからだ。


 洞窟の終点までやってくると、二人は街への入り口をくぐった。

 画面が暗転し、now loadingの表示が出た。

 ダウンロードを終え、二人は街へと戻ってきた。

 洞窟と繋がっていたのは「港」と呼ばれるエリアで、ここから周辺各国への定期便が就航している。


 しかしパスを持たないFlawは、まだこの空を走る定期便に乗ることは出来ず、いつになったら乗れるのだろう、と憧れと諦めの混ざった気持ちで見上げるばかりだった

 ――やっぱり、自分にはこの街はまぶしすぎる―
     * * * * *
Flaw:とうちゃーく!
Alphonce:はーい、おつかれさまでした。そうだ、名前、なんて読むんですか?
Flaw:フラウでお願いしまーす(^_^) そちらは?
Alphonce:長いんで、アルでいいです。
Flaw:今日はどうもありがとう、アルさん。じゃ、おやすみなさーい(^^)/
>FlawはAlphonceにていねいにお辞儀し
Alphonce:はーい、おつでした
>AlphonceはFlawに手を振った
Alphonce:そうそう、俺が猫至上主義なのは最高機密ですよ。では。
>Alphonceはニヤリと笑った

     * * * * *



 そう言うと、Alphonceはきびすを返して、再び島へと渡っていった。


面白い人……
 麗はくすりと笑った。

 ふと、廊下の方で足音がした。無論リアルの方である。

 ドアについている小さな窓から、ナースの照らす懐中電灯の明かりが僅かに見える。

やば、消さないと
 麗は慌ててベッドの脇の照明を落とし、ノートPCを閉じて布団を被った。
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登場人物紹介

神崎有人


永遠の時を生きる人外。民族楽器演奏や作戦立案に長じる。

兄の経営するPMC「GSS社」の平社員。ネトゲが趣味。

プレゼンの腕を買われ、武器商人として中央アジアの某国に派遣される。

自身が『白猫』と呼称する、ある女性を探している。

神崎怜央


有人の兄。同じく、永遠の時を生きる男。生物科学に長じる。

多国籍企業「GBI(グリフォン・バイオロジカル・インダストリー)社」のCEO。バイオ産業を基幹に、軍事産業、民間軍事会社、海運等々手広く商いをしている。NYに本拠を置くが、日系企業である。

有人の務めるPMC「GSS(グリフォン・セキュリティ・サービス)社」はGBIの子会社。

菊地


神崎有人の直属の上司。GSS社日本支部長。

強面の外見からは想像しにくいが、面倒見の良い性格。

好きな食べ物 チョコレートパフェ

アジャッル副司令


神崎有人の赴任先の責任者。年かさのわりには好奇心が強い。

大統領一族とは因縁浅からぬ関係。国内各部族の長老にも顔が利く。

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