【2・猫の人と中の人】ネカマ……じゃないよね?2
文字数 2,161文字
ふぅ、と息を吐くと、ログアウトの解除をした。
六十秒のカウントダウン中であれば、いつでも解除出来る仕組みだ。
FlawはAlphonceの後にぴったりくっついて、雪道をざくざくと歩き、途中気配を消す魔法などをかけてもらいつつ、巨人や魔法生物などの間をくぐって、街までの洞窟を歩いていった。
自分一人でこの洞窟を抜けたときは、いつ敵に見つかるかと必死だった。なのに今は全ての脅威を素通りしている。
彼女はちょっとした優越感に浸っていた。
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入院生活で自由の少ない彼女にとって、思うままどこにでも行かれるこの世界は、とても魅力的だった。
気が付けば、心が世界に入り込んでいることも少なくなかった。
聞こえるはずのない川のせせらぎや、踏みしめる枯れ草の感触、草原をわたる風が髪を揺らす感触、湿った霧の立ちこめる森の匂い……。
どれもリアルではないけれど、自分の意思で見て歩いている場所だからこそ、あると感じられることもあった。
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麗の最後の言葉に答えず、彼はそのまま道を急いでいた。
実際、街へは僅かな距離を残すだけだったのだ。でもそれが、彼女には少し冷たく感じられた。
思いの外早く街に着いて、麗は安心したと同時に、少し寂しい気もしていた。
別の誰かと一緒に行動する事自体、彼女にとっては貴重な体験だったからだ。
洞窟の終点までやってくると、二人は街への入り口をくぐった。
画面が暗転し、now loadingの表示が出た。
ダウンロードを終え、二人は街へと戻ってきた。
洞窟と繋がっていたのは「港」と呼ばれるエリアで、ここから周辺各国への定期便が就航している。
しかしパスを持たないFlawは、まだこの空を走る定期便に乗ることは出来ず、いつになったら乗れるのだろう、と憧れと諦めの混ざった気持ちで見上げるばかりだった
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そう言うと、Alphonceは踵を返して、再び島へと渡っていった。
ふと、廊下の方で足音がした。無論リアルの方である。
ドアについている小さな窓から、ナースの照らす懐中電灯の明かりが僅かに見える。