【5・キミが君でなくとも】ネトゲ彼女と結婚します4
文字数 1,112文字
二十歳だという彼女は、年よりもずっと幼く見えた。
写真は、病院のテラスで看護師の女性と撮ったもののようだった。
入院中なせいか、肩より少し長めの髪を、左右で分けて先から二十㎝ほどの所をゴムで結んでいた。
色気のない髪型だと彼は思った。笑顔は可愛らしかったが、やはり病気のためか痩せていて血色が悪かった。
『彼女』の面影を彼女に見たが、そう思い込みたい気持ちが見せる幻だと、彼は自分に言い聞かせた。これは気のせいだと。
精神が現実を歪ませることなど、いくらでも見てきたからだ。
気づけば午前三時、日本時間で七時だった。
病室を看護師が回って、入院患者の体温を測っているのだろう。
日本の病院では習慣のように毎朝検温をしているが、さほど体温の記録が必要とも思えない科でも検温をしている。
患者にとっても、看護師にとっても負担なだけだろう、と神崎は、小さくため息をついた。
悪気はないものの、結局神崎は麗の手中にまんまと落ちた形になった。
でも、彼はそれでもいいと思っていた。
いいかげん、悩むのにも疲れていたからだ。
『彼女』を待つのは、もうやめよう。
待たせるお前が悪いんだ、そう思うことにした。
調べたら人違いでした、なんて後でいくらでも言えるのだから。
――いいんだ。
キミが君でなくとも。
もう、待つのは諦めたんだ。……だから。ごめん。