【６】－１１
文字数 2,098文字
「皆様ご機嫌麗しゅう。って、なんだ、ブラザーもカーラちゃんもいないじゃないか。このところ、どうも引きが弱い……おっと前言撤回、すごいべっぴんちゃんがいるじゃん！
いいなーRMAは。俺も入れてもらおうかしら」
「なにあいつ？」
「クリスやガリーからの情報によると、どうやらあれがライヒという偉能者らしいですね。得体の知れないエネルギーを使うようなので、気を付けてください」
「では、ここは私に任せてください。メスメルのいない今ならファラデー・ディスクが使える」
マイクがディスクを構えて進み出る。
「そこをどきなさい。我々はキャプテンに用があるのです」
「ああそうなの。だけど、俺はそこのブロンドちゃんに用があるから通せないな」
「では、これを食らってもらいます！」
マイクがトリガーを引くのと同時にライヒは横っ飛びし、射線から逃れつつ、クラウドバスターを肩から下ろす。
3人はすぐに左右に散った。
ライヒがクラウドバスターの砲身を振ると、青白い光が横なぎにデッキをなめ、すさまじい熱波と木材が焦げる臭いが立ち込める。
「ファラデー君よ、事を急ぎすぎると女の子に嫌われちゃうぜ」
「あんたに言われたかないです！」
マイクはデッキに置かれているテーブルを盾に、再度ライヒを狙う。ライヒもそばにあったテーブルを蹴り倒し、その裏に回って電撃を防ぐ。さらに、間髪入れずにマイクにオルゴンエネルギーを照射した。
テーブルからわずかに覗いていたマイクの腕を、エネルギービームがかすめただけで袖が燃え上がり、マイクは腕を押さえて転がる。ビームがテーブルに触れると、テーブルは一瞬にして炎に包まれ、もはやマイクに逃げ場はない。
ザックがライヒを盾のテーブルごと丸囲みし、ロゴスを放とうとした。
が、それを察知したライヒがテーブルから飛び出して、今度はザックに狙いを定める。
そこへ、ダーナが身を乗り出し、
「“ベルヌーイ・ルール”！」
ライヒの右脇の流速を一気に高める。
ライヒは突風を食らったように右に吹っ飛び、床を転がるが、その勢いを利用してそのままさらに転がっていき、鉄柵で囲まれた船内空調システムの排気ダクトの後ろに入り込んだ。
「強烈な肘鉄だねー。でも、俺はこれぐらいじゃめげないよー」
マイクが燃えるテーブルの裏から走り出て、排気ダクトごと電撃を浴びせようと狙いをつけた。ところが、トリガーを引いても電撃が出ない。
ハッとして前方を見上げると、クラブ会員レストランの屋上に敵3人が立ちはだかっている。マイクはザックを振り返り、叫んだ。
「メスメルたちが戻りました！」
ザックが彼らの姿を確認した時、ライヒがクラウドバスターを構えてダクトの陰から忍び出るのが見えた。ファラデー・ディスクはもう使えない。
ザックが怒鳴る。
「あのコンテナの後ろに！」
退船する際に乗組員たちが置き残していった車輪付きの搬送コンテナへ、マイクとともにザックとダーナも走る。コンテナの後ろに駆け込んだ途端、オルゴンエネルギーが襲い掛かり、分厚い鉄板に噛みついた。
ザックたちはコンテナの陰から反撃しようとするが、照射が苛烈で顔を出せない。
「話に聞いた通りのすさまじいエネルギーだ。コンテナを引っ張りながら距離を取りましょう」
マイクが腕力に任せてコンテナを引き始めると、ライヒが照射を続けながら、にやけ笑いで呼びかける。
「そのコンテナ、いつまでもつのかなー？ とっとと降参しないと、べっぴんちゃんの顔が溶けた蝋人形みたいになっちまうぜ。
そんなの悲しすぎるだろ？」
コンテナが高熱を帯び始め、持ち手も熱くて触れなくなってくる。
「ううっ」
掌に火箸を当てられたようにマイクの顔が歪む。
「このままでは、正面突破は難しい。いったん退きましょう」
そう言いながらザックが後ろを見ると、スライドルーフに向かってデッキの床が大きく一段、低くなっている。
「あそこに降ります！」
攻撃が途切れた瞬間に、３人はコンテナを放棄し、段差を飛び越えて下に降りた。
「ここなら塹壕の代わりになる。ダーナ、隙をついて私がライヒを引きずり上げますから、ホイヘンスの時みたいに船の外に飛ばしてください」
「わかった」
だが、ザックが段差から顔を出そうとした時、炎に包まれた丸テーブルがデッキから転がり落ちてくる。３人はその場から飛びすさってテーブルを際どく避けた。
「おーい、白旗はまだかなー」
ライヒのバカ陽気な声が響く。
「もう１度やります」
ザックが単原子傘を差し上げ、その先をちらりと覗かせた。途端にエネルギービームが襲い、傘の石突から煙が上がる。その攻撃が止むのと同時に、ザックは伸びをして、ビームの発射地点の方角を指さそうとした。
が、その時、ザックは足の下の感触がウッドデッキのものとは違っているのに気づく。
今立っているのはスライドルーフの上！
遠くの屋根の上で、オイラーがこっちに杖を向けている。
「まずい！ ここから出て——」
もう間に合わなかった。
オイラーの多面体ロゴスがスライドルーフを粉々に破壊し、３人は強化ガラスの破片とともに、階下のプールに吞み込まれていった。
いいなーRMAは。俺も入れてもらおうかしら」
「なにあいつ？」
「クリスやガリーからの情報によると、どうやらあれがライヒという偉能者らしいですね。得体の知れないエネルギーを使うようなので、気を付けてください」
「では、ここは私に任せてください。メスメルのいない今ならファラデー・ディスクが使える」
マイクがディスクを構えて進み出る。
「そこをどきなさい。我々はキャプテンに用があるのです」
「ああそうなの。だけど、俺はそこのブロンドちゃんに用があるから通せないな」
「では、これを食らってもらいます！」
マイクがトリガーを引くのと同時にライヒは横っ飛びし、射線から逃れつつ、クラウドバスターを肩から下ろす。
3人はすぐに左右に散った。
ライヒがクラウドバスターの砲身を振ると、青白い光が横なぎにデッキをなめ、すさまじい熱波と木材が焦げる臭いが立ち込める。
「ファラデー君よ、事を急ぎすぎると女の子に嫌われちゃうぜ」
「あんたに言われたかないです！」
マイクはデッキに置かれているテーブルを盾に、再度ライヒを狙う。ライヒもそばにあったテーブルを蹴り倒し、その裏に回って電撃を防ぐ。さらに、間髪入れずにマイクにオルゴンエネルギーを照射した。
テーブルからわずかに覗いていたマイクの腕を、エネルギービームがかすめただけで袖が燃え上がり、マイクは腕を押さえて転がる。ビームがテーブルに触れると、テーブルは一瞬にして炎に包まれ、もはやマイクに逃げ場はない。
ザックがライヒを盾のテーブルごと丸囲みし、ロゴスを放とうとした。
が、それを察知したライヒがテーブルから飛び出して、今度はザックに狙いを定める。
そこへ、ダーナが身を乗り出し、
「“ベルヌーイ・ルール”！」
ライヒの右脇の流速を一気に高める。
ライヒは突風を食らったように右に吹っ飛び、床を転がるが、その勢いを利用してそのままさらに転がっていき、鉄柵で囲まれた船内空調システムの排気ダクトの後ろに入り込んだ。
「強烈な肘鉄だねー。でも、俺はこれぐらいじゃめげないよー」
マイクが燃えるテーブルの裏から走り出て、排気ダクトごと電撃を浴びせようと狙いをつけた。ところが、トリガーを引いても電撃が出ない。
ハッとして前方を見上げると、クラブ会員レストランの屋上に敵3人が立ちはだかっている。マイクはザックを振り返り、叫んだ。
「メスメルたちが戻りました！」
ザックが彼らの姿を確認した時、ライヒがクラウドバスターを構えてダクトの陰から忍び出るのが見えた。ファラデー・ディスクはもう使えない。
ザックが怒鳴る。
「あのコンテナの後ろに！」
退船する際に乗組員たちが置き残していった車輪付きの搬送コンテナへ、マイクとともにザックとダーナも走る。コンテナの後ろに駆け込んだ途端、オルゴンエネルギーが襲い掛かり、分厚い鉄板に噛みついた。
ザックたちはコンテナの陰から反撃しようとするが、照射が苛烈で顔を出せない。
「話に聞いた通りのすさまじいエネルギーだ。コンテナを引っ張りながら距離を取りましょう」
マイクが腕力に任せてコンテナを引き始めると、ライヒが照射を続けながら、にやけ笑いで呼びかける。
「そのコンテナ、いつまでもつのかなー？ とっとと降参しないと、べっぴんちゃんの顔が溶けた蝋人形みたいになっちまうぜ。
そんなの悲しすぎるだろ？」
コンテナが高熱を帯び始め、持ち手も熱くて触れなくなってくる。
「ううっ」
掌に火箸を当てられたようにマイクの顔が歪む。
「このままでは、正面突破は難しい。いったん退きましょう」
そう言いながらザックが後ろを見ると、スライドルーフに向かってデッキの床が大きく一段、低くなっている。
「あそこに降ります！」
攻撃が途切れた瞬間に、３人はコンテナを放棄し、段差を飛び越えて下に降りた。
「ここなら塹壕の代わりになる。ダーナ、隙をついて私がライヒを引きずり上げますから、ホイヘンスの時みたいに船の外に飛ばしてください」
「わかった」
だが、ザックが段差から顔を出そうとした時、炎に包まれた丸テーブルがデッキから転がり落ちてくる。３人はその場から飛びすさってテーブルを際どく避けた。
「おーい、白旗はまだかなー」
ライヒのバカ陽気な声が響く。
「もう１度やります」
ザックが単原子傘を差し上げ、その先をちらりと覗かせた。途端にエネルギービームが襲い、傘の石突から煙が上がる。その攻撃が止むのと同時に、ザックは伸びをして、ビームの発射地点の方角を指さそうとした。
が、その時、ザックは足の下の感触がウッドデッキのものとは違っているのに気づく。
今立っているのはスライドルーフの上！
遠くの屋根の上で、オイラーがこっちに杖を向けている。
「まずい！ ここから出て——」
もう間に合わなかった。
オイラーの多面体ロゴスがスライドルーフを粉々に破壊し、３人は強化ガラスの破片とともに、階下のプールに吞み込まれていった。
