クリスタルの洞窟

文字数 1,018文字

魔法学校の北西に広がる大森林“黄昏の樹海”には大小様々な洞窟が点在しています。
そこは色々な鉱石が採れる立派な鉱山でした。
そのいくつかの採石所は生徒が自由に利用出来る様になっています。
魔法の中にはたくさんの鉱石が必要になるものがあるので、魔法学を志す人にはとても大切な場所でした。
「早く終わらせてお茶にするの」
授業を終えたすずとランカは慣れた様子で中に入ってゆきます。
採石所へと続く坑道は背の高い人がジャンプすれば手が届く程の狭い造り。
暗くてひんやりと肌寒く、独特の音の反響が外とは異質な空気を感じさせます。
太陽の光が全く届かない坑内。
でも光を蓄える性質を持つ蓄光石のおかげで歩き回るには困りません。
岩肌が淡い青緑の光を携えています。
二人は採石所で採れる“クリスタル”を探しに来ていました。
“クリスタル”と聞くと水晶を思い浮かべる人が多いと思いますがちょっと違います。
魔法学でクリスタルは“氷の様な鉱物の結晶”を指す総称で、水晶はもちろん赤いルビーも青いサファイアも全てクリスタルと呼ばれていました。
明日の授業ではダイヤモンドを使うので、日直の二人が採りに来たのです。
え?
あぁ、宝石の採れる採石所が開放されているなんて、僕達の世界では考えられませんよね。
何か悪い事を考える人が出てもおかしくありません。
でもすず達の世界では大丈夫なんです。
だってダイヤモンドなんて固くて綺麗なだけの石ころなんですから。
職人が時間をかけて作ったガラス細工の方が何倍も素敵。
ここでの宝石とは“失われた力が込められた石”の事を指します。
だからダイヤモンドの原石をいくら掘り起こしたって大したお金にはなりません。
重要なのは何に使うかなんですよね。
おっと、小話をしているうちに到着した様です。
そこは少しひらけた空間。
流石に蓄光石の光だけでは心許ないのでランタンを用意します。
ランタンとは手に提げて使用できるランプの事。
杖代わりの小枝を構えたすずは集中すると魔法式を唱えました。
「炎よ!」
命じると少々立派過ぎる炎が生まれ、ランタンに火が灯ります。
「ごめん。熱くなかった?」
「大丈夫よ」
火を扱う魔法ってちょっと加減が難しいんですよね。
杖にした小枝が半分燃え尽きています(汗)
少し驚いたランカでしたが、気を取り直してランタンを掲げます。
様々なクリスタルを含む岩盤が光を反射してキラキラと煌めきました。
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登場人物紹介

鈴音(すずね)


修道院の貧困を救うためにお金を稼げる大人を目指している孤児院出身の女の子。

努力と根性で高名な魔法学校に次席入学を果たした。

過去に壮絶な死別を経験しており、食べ物を粗末にする事を極端に嫌う。

明るく積極的で協調性にも優れ友達が多い。

しかし実は周囲の生徒と価値観が合わず、本当の友達と呼べるのはランカ一人しかいない。


モデル:CHOCO鈴音

蘭華(ランカ)


すずねの親友で魔法学校を主席で入学した秀才。

天才肌で大抵の勉強は授業のみで覚えられる。

しかし将来に対して何の希望も目標も持てず悩んでいる。

明るく行動的なすずねに刺激を受けてうわさ話を追いかけている。

意外と抜けている一面も。

好物はラーメン。


モデル:CHOCO蘭華

無糖あず(語り手)


二次創作“君影草と魔法の365日”の作者。

トーク作品で一話の“消えた石像の謎”や没ネタ、没エピソードも公開中。

君影草を好きになってくれた人はぜひ!

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