睡魔に打ち克つスパイス

文字数 967文字

どうしても眠気が覚めず、与えられた役目を全う出来ない。
コレがガーゴイルの悩みでした。
石で出来た魔法生物の彼に、そもそも睡眠が必要なのか?
色々と疑問が湧く話ではありますけどね。
「睡魔に打ち克つには刺激的な食べ物をクチにすると良いと訊いた事があるであります」
彼自身が考案した解決策は刺激的な味の料理を食べるショック療法でした。
効果が一時的でその場しのぎな気がしますけど…。
とにもかくにも、この先もお世話になるみたいなので2人は手伝う事にしました。
刺激的な味と聞いて最初に思い浮かんだのはスパイス。
スパイスといえばカリー。
ピン!と閃いたすずは早速調理に取り掛かりました。
「これがお薦めの刺激的な料理でありますか?」
ガーゴイルの問いにすずは自信満々で答えます。
「そう!鈴音特製の“すぺしゃる地獄カリー”なの!!」
辺りにスパイスの豊かな香りが漂います。
ただ…
そのルーはマグマの様に煮えたぎり、触れたサフランライスが炭化を始めています。
いったい、どんな調理法を用いればこんなルーが完成するのでしょう?
明らかに危険なビジュアルですがランカは止めません。
「頂くであります!」
ガーゴイルは長い舌でカレーを器用にすくい取って、一口で平らげてしまいました。
「ううっ…こ…これは…っ!?」
大丈夫でしょうか?
ガーゴイルの身体が小刻みに震えています。
「うまい!美味すぎるでありますっ!」
ガーゴイルは確かにそう吠えました。
「甘からず辛からず、酸味もほどほどの絶妙なバランスのこの味!正に究極の料理と言えるであります!!」
そう饒舌に語る彼のクチからは、明らかに煙が立ち昇ってます。
「こんな美味しい料理を作って来ていただいてとても恐縮でありますが…。残念ながら少々刺激が足りないようであります」
美味しさの衝撃で少しの間は目が覚めた様ですが…。
どうやら石像の彼にはスパイスの辛味など通用しないみたいです。
「もっと不味くてドギツイ味の方が今の自分にとっては…ありがた…い…でありま…す」
そう言いながら再び睡魔に襲われるガーゴイル。
意識が遠退く夢の狭間で、昔訊いた話の続きを思い出していました。
「魔法…毒…キノコ…?」
どうやらこのキーワードに解決策が隠されている様です。

1品目 失敗
星 ☆★★ 1つ
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

鈴音(すずね)


修道院の貧困を救うためにお金を稼げる大人を目指している孤児院出身の女の子。

努力と根性で高名な魔法学校に次席入学を果たした。

過去に壮絶な死別を経験しており、食べ物を粗末にする事を極端に嫌う。

明るく積極的で協調性にも優れ友達が多い。

しかし実は周囲の生徒と価値観が合わず、本当の友達と呼べるのはランカ一人しかいない。


モデル:CHOCO鈴音

蘭華(ランカ)


すずねの親友で魔法学校を主席で入学した秀才。

天才肌で大抵の勉強は授業のみで覚えられる。

しかし将来に対して何の希望も目標も持てず悩んでいる。

明るく行動的なすずねに刺激を受けてうわさ話を追いかけている。

意外と抜けている一面も。

好物はラーメン。


モデル:CHOCO蘭華

無糖あず(語り手)


二次創作“君影草と魔法の365日”の作者。

トーク作品で一話の“消えた石像の謎”や没ネタ、没エピソードも公開中。

君影草を好きになってくれた人はぜひ!

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み