ゴーレム・コンクール

文字数 937文字

その高層ビルの様に高いレンガ造りの塔は校舎から少し離れた平地にポツンと建っていました。
“星読みの塔”
中には図書室や視聴覚室、応接室に校長室と様々な部屋があり、大きな望遠鏡が突き出た屋上は天文台になっています。
時間を守れば誰でも自由に利用する事ができるのですが…
彼女達は閉館時間を過ぎた真夜中に忍び込んでいました。
何をしているのでしょう?
この時期、2っ星以上の上級生達 は“ゴーレム・コンクール”に参加します。
“ゴーレム”とは魔法で仮初めの命を吹き込んだ巨大な土人形の事。
本来は城や砦を守る城兵として活躍します。
屈強で力強い基本に忠実な作品。
繊細できらびやかな芸術的作品。
滑らかでしなやかな命を思わせる作品。
コミカルでカワイイフィギュアの様な作品。
コンクールでは全国から様々な作品が出品されて、その出来栄えが競われました。
箱庭は上位入選の常連校。
今年もかなり気合いが入ってる様子。
塔の周りにはゴーレム制作の足場が組まれ、大勢の生徒が徹夜の作業に追われています。
雰囲気は学校祭の前夜。
皆が一つの目標に向かって邁進し、青春を謳歌しています。
作業は細かく分担されていて、班ごとに任された仕事を協力して進めていました。
先生は助けてくれません。
設計から制作まで学生の力だけで完成させるのです。
当然、調べなければ分からない事など山程出てきました。
なので、調べ物を円滑に行う為、遅い時間も図書室を特別開放していたのです。
彼女達は簡単に紛れ込む事が出来ました。
ランカの手には鍵が握り締められています。
静かな部屋で鍵を回すと、思いのほか大きな音が響きました。
「ねぇねぇ、気付かれなかったかな?」
「大丈夫なの。早く本を…」
すずは扉の前に残って周囲を警戒します。
ランカは魔法で小さな明かりを灯すと、本棚をあさり始めました。
ソコは先生か図書局員しか入れない立ち入り禁止の部屋。
中には危険な書物がたくさん眠っています。
整理が不十分な本棚から目的の本を探すのは一苦労。
焦れば尚更時間がかかります。
しかし彼女は落ち着いて指でなぞりました。
「あったよ」
彼女が手に取った一冊の本。
その表紙には“禁書”の文字がハッキリ記されていました。
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登場人物紹介

鈴音(すずね)


修道院の貧困を救うためにお金を稼げる大人を目指している孤児院出身の女の子。

努力と根性で高名な魔法学校に次席入学を果たした。

過去に壮絶な死別を経験しており、食べ物を粗末にする事を極端に嫌う。

明るく積極的で協調性にも優れ友達が多い。

しかし実は周囲の生徒と価値観が合わず、本当の友達と呼べるのはランカ一人しかいない。


モデル:CHOCO鈴音

蘭華(ランカ)


すずねの親友で魔法学校を主席で入学した秀才。

天才肌で大抵の勉強は授業のみで覚えられる。

しかし将来に対して何の希望も目標も持てず悩んでいる。

明るく行動的なすずねに刺激を受けてうわさ話を追いかけている。

意外と抜けている一面も。

好物はラーメン。


モデル:CHOCO蘭華

無糖あず(語り手)


二次創作“君影草と魔法の365日”の作者。

トーク作品で一話の“消えた石像の謎”や没ネタ、没エピソードも公開中。

君影草を好きになってくれた人はぜひ!

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