呪いの断崖

文字数 921文字

ズンズンと響く足音。
「な、なんだあれ!?
「怪物だー!」
罵声と怒号、悲鳴がこだまします。
…なんて事が起きても良い情景なんですが。
いま三人は商店街を闊歩していました。
目指すは町の北東にある“恋人岬”
町の人達も地底人の姿に一度は驚くのですが、全く混乱する気配も無く落ち着いたものです。
黄昏の樹海に近いこの地域では、珍しい生き物が迷い込むなんてよくある事なんですよね。
箱庭魔法学校の敷地内は巨大な結界によって護られていました。
邪悪な意志を持った存在を総じて“悪魔”と呼びますが、弱い悪魔なら結界に触れるだけで大火傷を負ってしまいます。
結界が破られる様な事があれば保安官や自警団が黙っていません。
皆、彼が無害だと知っているんです。
ただ、その平和ボケと言われても仕方ない認識の甘さは問題だったりするのですが。
まぁ、そもそも地底人の事を知っていた人もいるかも知れませんね。
「ねぇねぇ着いたよ」
恋人岬は急な階段を頑張って昇るとたどり着く岬の公園でした。
とても高い場所にあるので、水平線の彼方まで続いてる美しい海や箱庭の夜景を一望出来ます。
モニュメントに吊された大きな鐘は愛と友情のシンボルとされていて、その下で結ばれた2人は永遠を手にすると噂されていました。
この町に住んでる人の誰もが心から自慢出来る名所です。
まぁ、地底人が求めてる場所とはかけ離れていますけどね。
「おー、ここが“呪い(のろい)の断崖”かぁ。写真の通り綺麗なトコだべ」
『なんで!?
またしてもビンゴ!
2人が案内した“岬”こそ彼の行きたかった“断崖”だったんです。
「ここは仲良くなった人と待ち合わせをすることで不思議なパワーを授かる場所…らしいっぺ」
うーん…間違いではない様ですが…。
「で…どこが呪いなのかしら…?」
すずの問いに彼は答えます。
「ここで愛を誓うと女は男へ“永遠に従わせる呪い”をかける…っていうでねーか」
呪いって…(汗)
「ずっと従わねばならねぇなんて地上はこえーとこだぁ。けども地上巡りは楽しいなぁ」
・・・・・・。
「地底人から見た地上の女性像ってどーゆーイメージなわけ!?
すずの突っ込みが岬にこだましました。
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登場人物紹介

鈴音(すずね)


修道院の貧困を救うためにお金を稼げる大人を目指している孤児院出身の女の子。

努力と根性で高名な魔法学校に次席入学を果たした。

過去に壮絶な死別を経験しており、食べ物を粗末にする事を極端に嫌う。

明るく積極的で協調性にも優れ友達が多い。

しかし実は周囲の生徒と価値観が合わず、本当の友達と呼べるのはランカ一人しかいない。


モデル:CHOCO鈴音

蘭華(ランカ)


すずねの親友で魔法学校を主席で入学した秀才。

天才肌で大抵の勉強は授業のみで覚えられる。

しかし将来に対して何の希望も目標も持てず悩んでいる。

明るく行動的なすずねに刺激を受けてうわさ話を追いかけている。

意外と抜けている一面も。

好物はラーメン。


モデル:CHOCO蘭華

無糖あず(語り手)


二次創作“君影草と魔法の365日”の作者。

トーク作品で一話の“消えた石像の謎”や没ネタ、没エピソードも公開中。

君影草を好きになってくれた人はぜひ!

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