整理出来ない悩み事

文字数 958文字

優しそうな人。
親切そうな人。
誠実そうな人。
今日も沢山のお客さんがフラワー・デイジーに来てくれました。
その中の殆どの人は純粋に花が好きで、花が欲しくて買いに来てくれていると信じています。
ただ…。
「この前、町外れの橋を通りかかった時に見てしまったの」
河原にあった不自然な盛り土の様なもの。
散乱するポットや土…そして花。
それは無造作に捨てられたフラワー・デイジーの花でした。
恐らく買いすぎて手に余ったのでしょう。
「沢山買ってもらったって、私は何も出来ないのに…」
それにお店のお花を全て買い占められたら、本当に必要としてくれている人が困ってしまいますよね。
こんな話をすると語弊があるかも知れませんが、自分が沢山の男性から好意を寄せられている現状を彼女は自覚しています。
一部の人が歪んだ表現でアプローチしている事も。
これから先も同じ事を繰り返して花屋を続ける事に意味があるのか。
そもそも自分が何をしたいのか。
「・・・・・・」
そこまで話して、デイジーさんは酷く後悔しました。
こんなの論点が定まらず相談にならないただの愚痴です。
以前、ショップのカリスマ店長をやっている親友に同じ話を漏らした時、バッサリ切り捨てられて注意されました。
それってゼロからお店始めた私にしてみたら、超羨ましい話なんですけど~!
綺麗なデイジーにそんな事言われても、自慢話にしか聞こえないみたいな~。
つか私だから分かってあげられるけど、他の人に話したらめっさボコられるの必至な感じだし、マジほんと気を付けたほーがいーゾ。
…あ、すいません(汗)
その親友ってこんな語り口なんです。
デイジーさんは恋愛と仕事が微妙に絡み合った悩み事を抱えていて、自身でも整理できていない様子でした。
さっき指摘された通り疲れていたのかもしれません。
歳が離れた学生相手にこんな話をするなんて…。
するとランカは決して察した様子を見せず、あえてこんな質問をしてみました。
「他のお客さんの中に素敵な人いないんですか?」
そこには『仕事の相談は力になれないけど、恋愛話なら付き合いますよ』というメッセージも込められています。
デイジーさんはランカが賢く気遣いが出来る子だと改めて気付き、だからつい話をしてしまったんだと思い出しました。
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登場人物紹介

鈴音(すずね)


修道院の貧困を救うためにお金を稼げる大人を目指している孤児院出身の女の子。

努力と根性で高名な魔法学校に次席入学を果たした。

過去に壮絶な死別を経験しており、食べ物を粗末にする事を極端に嫌う。

明るく積極的で協調性にも優れ友達が多い。

しかし実は周囲の生徒と価値観が合わず、本当の友達と呼べるのはランカ一人しかいない。


モデル:CHOCO鈴音

蘭華(ランカ)


すずねの親友で魔法学校を主席で入学した秀才。

天才肌で大抵の勉強は授業のみで覚えられる。

しかし将来に対して何の希望も目標も持てず悩んでいる。

明るく行動的なすずねに刺激を受けてうわさ話を追いかけている。

意外と抜けている一面も。

好物はラーメン。


モデル:CHOCO蘭華

無糖あず(語り手)


二次創作“君影草と魔法の365日”の作者。

トーク作品で一話の“消えた石像の謎”や没ネタ、没エピソードも公開中。

君影草を好きになってくれた人はぜひ!

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