紫の黄昏
文字数 967文字
箱庭の地において“紫の黄昏”は珍しい事ではありません。
黄昏の樹海には開けっ放しの“ゲー ト”が無数に存在すると伝えられているくらいですから。
ゲートとは異世界に繋がる出入口の事。
ある人は薄汚い壊れかけの扉だと言います。
ある人は美しい装飾が施された立派な門だと言います。
またある人は無形の空間の裂け目だと言います。
紫の黄昏が起きる原因は、異世界から流れ込むチカラに関係があると言われていました。
ソレがある場所こそ見つかっていないものの、この現象は毎月1~2回ほど起きる箱庭名物みたいなものなのです。
すずは初体験なんですけどね。
夕焼けが紫に染まった様な空。
普段の夜にはお目にかかれない珍しい星達が瞬き…
大地も紫に染められて異世界が侵食しているみたいです。
見た事も無い動物がそこらじゅうを駆け回り飛び回り…
不可思議な植物が早送りした様に一斉に芽吹き成長する。
その様子を見たすずは、ガラス張りの壁に手をついたまま暫く絶句します。
ランカから話は聞いていましたが、実際に目にした世界は想像以上に刺激的でした。
「早く行くの!」
期待通りのリアクションをみせるすずの姿にランカもテンションを上げます。
長く箱庭に住むランカでさえ、紫の黄昏が起きる度に新しい驚きと出会いがありました。
彼女も二人でこの時を迎える瞬間を楽しみにしていたのです。
しかし、本当なら外へ駆け出して紫の黄昏を満喫したいトコロなのですが、状況は許してくれません。
それは階段を降りて外へ向かう途中、異様な光景を目にしたから。
「皇子! 皇子! 大丈夫!?」
開かずの扉の前を光り輝く何かが飛び回っています。
そして床には見たことの無い石像が倒れていました。
まるで扉から飛び出てきた様子で。
光はひっきりなしに虚空へ声を掛けますが“皇子”と呼ばれた何かからの応えはありません。
見ると石像の横には砕けた赤い透明な石が散っています。
「“言霊石”が割れた!? これじゃ皇子 と話せないじゃん…」
声は毒づきました。
“言霊石”(ことだまいし)とは“チカラ を持つ言葉”を封じ込めた宝石の総称で す。
正確に刻まれた魔法語が所持者の魔力を糧にチカラを発揮し続けます。
話の流れから察して、砕けた石には“皇子”と会話するチカラが秘められていた様ですが…。
黄昏の樹海には開けっ放しの“ゲー ト”が無数に存在すると伝えられているくらいですから。
ゲートとは異世界に繋がる出入口の事。
ある人は薄汚い壊れかけの扉だと言います。
ある人は美しい装飾が施された立派な門だと言います。
またある人は無形の空間の裂け目だと言います。
紫の黄昏が起きる原因は、異世界から流れ込むチカラに関係があると言われていました。
ソレがある場所こそ見つかっていないものの、この現象は毎月1~2回ほど起きる箱庭名物みたいなものなのです。
すずは初体験なんですけどね。
夕焼けが紫に染まった様な空。
普段の夜にはお目にかかれない珍しい星達が瞬き…
大地も紫に染められて異世界が侵食しているみたいです。
見た事も無い動物がそこらじゅうを駆け回り飛び回り…
不可思議な植物が早送りした様に一斉に芽吹き成長する。
その様子を見たすずは、ガラス張りの壁に手をついたまま暫く絶句します。
ランカから話は聞いていましたが、実際に目にした世界は想像以上に刺激的でした。
「早く行くの!」
期待通りのリアクションをみせるすずの姿にランカもテンションを上げます。
長く箱庭に住むランカでさえ、紫の黄昏が起きる度に新しい驚きと出会いがありました。
彼女も二人でこの時を迎える瞬間を楽しみにしていたのです。
しかし、本当なら外へ駆け出して紫の黄昏を満喫したいトコロなのですが、状況は許してくれません。
それは階段を降りて外へ向かう途中、異様な光景を目にしたから。
「皇子! 皇子! 大丈夫!?」
開かずの扉の前を光り輝く何かが飛び回っています。
そして床には見たことの無い石像が倒れていました。
まるで扉から飛び出てきた様子で。
光はひっきりなしに虚空へ声を掛けますが“皇子”と呼ばれた何かからの応えはありません。
見ると石像の横には砕けた赤い透明な石が散っています。
「“言霊石”が割れた!? これじゃ皇子 と話せないじゃん…」
声は毒づきました。
“言霊石”(ことだまいし)とは“チカラ を持つ言葉”を封じ込めた宝石の総称で す。
正確に刻まれた魔法語が所持者の魔力を糧にチカラを発揮し続けます。
話の流れから察して、砕けた石には“皇子”と会話するチカラが秘められていた様ですが…。