オルガン奏者
文字数 950文字
「やっほ~ぅ!」
リリーは風に身体を任せて思いっきり空を飛ぶのが大好きでした。
実は妖精って重力を中和してフワフワ飛ぶのが普通です。
背中の薄い透明な羽は各々が司るチカラの源を魔力に変換する為のもので、いくら羽ばたいても大した浮力は生まれません。
彼女はその羽を風に乗せて、舞う様に空を滑るのが得意なんです。
こうやってノビノビ気ままに過ごすのは久しぶりでした。
お茶会の後、昼寝を始めたすずとランカはちっとも起きる気配がありません。
だからせっかくの天気なので青い空を満喫していたんです。
そんな彼女の耳に学校のチャイムが聞こえてきました。
箱庭校のチャイムはパイプオルガンが奏でる不思議で歴史を感じる音色です。
「時間だね」
風下は丁度良く学校の方角。
学校の最上階に位置する時計台へ向かいます。
「皇子が言ってたのはアレかい?」
そこに小さな丸い窓を見つけると、ヒラリと身体をかわして風から降りました。
「誰もいないな…」
窓枠に降り立ち人影が無い事を確認。
遠慮なしに部屋へ入っていきます。
時計台の中では歯車が騒がしく音をたてていました。
端にはたくさん積まれた木箱や段ボール。
恐らく教材として使われる魔法陣のカーペット。
何かの薬品が詰められたボトルや樽。
たぶん物置に使われているのでしょう。
そんな雑然とした部屋の奥に古くても立派なオルガンがありました。
ホコリの無い様子から、毎日大事に手入れされている様です。
その背からいくつものパイプが不規則に延びていて、高い天井まで繋がっていました。
さっき聞こえたチャイムはたぶんコレですね。
ベルは恐る恐る鍵盤の1つに立って弾いてみます。
しかしパイプは鳴らずオルガンから普通に音が聞こえるだけ。
「こいつじゃないのか?」
そう理解しかけたその時、不意に声を掛けられました。
「定時以外はパイプに繋がれていないのさ。触っただけでチャイムが鳴ったら困るだろ?」
びっくりして辺りを見回しますが、やはり誰もいません。
「おいおい。俺は目の前にいるだろ」
元気なおじいちゃんって雰囲気のしっかりした声。
リリーは確信します。
「アンタがしゃべったのかい?」
今更この魔法世界で驚きませんが話し掛けてきたのは間違いなくそのパイプオルガンでした。
リリーは風に身体を任せて思いっきり空を飛ぶのが大好きでした。
実は妖精って重力を中和してフワフワ飛ぶのが普通です。
背中の薄い透明な羽は各々が司るチカラの源を魔力に変換する為のもので、いくら羽ばたいても大した浮力は生まれません。
彼女はその羽を風に乗せて、舞う様に空を滑るのが得意なんです。
こうやってノビノビ気ままに過ごすのは久しぶりでした。
お茶会の後、昼寝を始めたすずとランカはちっとも起きる気配がありません。
だからせっかくの天気なので青い空を満喫していたんです。
そんな彼女の耳に学校のチャイムが聞こえてきました。
箱庭校のチャイムはパイプオルガンが奏でる不思議で歴史を感じる音色です。
「時間だね」
風下は丁度良く学校の方角。
学校の最上階に位置する時計台へ向かいます。
「皇子が言ってたのはアレかい?」
そこに小さな丸い窓を見つけると、ヒラリと身体をかわして風から降りました。
「誰もいないな…」
窓枠に降り立ち人影が無い事を確認。
遠慮なしに部屋へ入っていきます。
時計台の中では歯車が騒がしく音をたてていました。
端にはたくさん積まれた木箱や段ボール。
恐らく教材として使われる魔法陣のカーペット。
何かの薬品が詰められたボトルや樽。
たぶん物置に使われているのでしょう。
そんな雑然とした部屋の奥に古くても立派なオルガンがありました。
ホコリの無い様子から、毎日大事に手入れされている様です。
その背からいくつものパイプが不規則に延びていて、高い天井まで繋がっていました。
さっき聞こえたチャイムはたぶんコレですね。
ベルは恐る恐る鍵盤の1つに立って弾いてみます。
しかしパイプは鳴らずオルガンから普通に音が聞こえるだけ。
「こいつじゃないのか?」
そう理解しかけたその時、不意に声を掛けられました。
「定時以外はパイプに繋がれていないのさ。触っただけでチャイムが鳴ったら困るだろ?」
びっくりして辺りを見回しますが、やはり誰もいません。
「おいおい。俺は目の前にいるだろ」
元気なおじいちゃんって雰囲気のしっかりした声。
リリーは確信します。
「アンタがしゃべったのかい?」
今更この魔法世界で驚きませんが話し掛けてきたのは間違いなくそのパイプオルガンでした。