皇子の石像

文字数 946文字

その国は北方の小さな島にありました。
とても小さな国でしたが、自然と人間の調和がとれた幸せな国でした。
でもそれは全ては過去の話。
戴冠式の日。
国王は王冠を掲げた姿のまま。
皇子は抵抗して魔法式を唱える姿のまま。
その場にいたほとんどの人間が、黒い霧に包まれ石像に姿を変えました。
首謀者が誰かも分からないまま国は滅び、数名の近衛騎士とリリーは皇子の石像と亡命を試みます。
しかし追っ手に襲われて、やむなく“始まりと終わりの扉”を使いました。
始まりと終わりの扉とはゲートの事でしょうか?
なるほど。
つまり皇子とは美少年の石像の事で、彼女は石像に話し掛けていたんですね。
そのクチから語られた話は、まるでドラマやアニメの様でした。
「でもテレビもネットもニュースになってないよ。もしかしたら違う世界か違う時間から来たのかな?」
ランカの言葉にリリーは焦りの色を滲ませます。
「紫の黄昏が終わる前に“言霊石”を精製しないと、アタイ達帰れなくなるじゃん…」
どういう事でしょう?
紫の黄昏は翌日の日の出と伴に終わりを迎えますが…。
「紫の黄昏が続く間はまだあっちと繋がってるのサ。皇子から魔法式を教えてもらえれば扉が開けるんだよ。」
リリー達は追っ手から逃げ延びる為に、ドコだか分からない世界に繋がってる扉を通って来たんです。
一度切れてしまったら、また元の世界に繋がるとは限りません。
このまま帰れなくなる事を2人は望んでいないんです。
すずは腕時計に目をやりました。
針は既に16時を回っています。
今は5月の始めですから日の出は…
「ジョギングで5時に起きたら、外はもう明るいの」
「多分、今の季節は4時くらいで日が昇り始めるから、余裕もって見積もると12時間無いよ」
何も分からない状態から始めて事を成し遂げるには、あまりにも時間が足りない様に思えます。
「ねぇねぇ、先生達に相談した方が良いんじゃないかな?」
“言霊石”の精製には高度な技術が必要になります。
学生の2人には…
「だめだめだめ! 大人は建前やら法律やらでがんじがらめだ! アタイはアンタ達にお願いしてるんだよ」
・・・・・・?
それを聞いた二人は使命感を持って思案し始めますが…
どうもリリーには隠し事がある様です。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

鈴音(すずね)


修道院の貧困を救うためにお金を稼げる大人を目指している孤児院出身の女の子。

努力と根性で高名な魔法学校に次席入学を果たした。

過去に壮絶な死別を経験しており、食べ物を粗末にする事を極端に嫌う。

明るく積極的で協調性にも優れ友達が多い。

しかし実は周囲の生徒と価値観が合わず、本当の友達と呼べるのはランカ一人しかいない。


モデル:CHOCO鈴音

蘭華(ランカ)


すずねの親友で魔法学校を主席で入学した秀才。

天才肌で大抵の勉強は授業のみで覚えられる。

しかし将来に対して何の希望も目標も持てず悩んでいる。

明るく行動的なすずねに刺激を受けてうわさ話を追いかけている。

意外と抜けている一面も。

好物はラーメン。


モデル:CHOCO蘭華

無糖あず(語り手)


二次創作“君影草と魔法の365日”の作者。

トーク作品で一話の“消えた石像の謎”や没ネタ、没エピソードも公開中。

君影草を好きになってくれた人はぜひ!

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み