蛙油キズナイン

文字数 946文字

ドラゴンは不安でした。
人間のテリトリーに墜ちた時点で覚悟は決まっていたのですが。
いざ、自分の運命が子供の二人に…人間に握られていると考えると、生きた心地がしません。
彼女達は手作りの薬を用意してくれました。
でも彼は思います。
『本当に信じて大丈夫なのか?』
もしこれが痺れ薬や眠り薬の類いなら、殺された方が救いのある辱しめを受けるかもしれません。
『今は彼女を信じるしかないか…』
全て、魔法語を話す不思議な少女に託します。
すずとランカは彼の後ろに回りました。
【酷いの…】
ランタンに照らされる怪我。
翼から背中にかけて鋭利な刃物で斬り付けられた様な傷が痛々しく刻まれていました。
出血こそ止まっていますが、このまま放って置けば化膿して大変な事になっちゃいます。
【まずは傷口を綺麗にしないといけないの】
2人は樫の木で作られた杖を構えると、意識を集中して魔法式を唱えました。
【水よ!】
すると杖の先からまるでシャワーの様に水が出てきました。
通称“じょうろ”
空気中の水蒸気やら周りの水分を集めて、杖の先からシャワーの様に放水する初歩的な魔法です。
使う場所の環境に左右されやすいのですが、この洞窟では十分な水量が確保出来ました。
出来るだけ優しく血や土を洗い流します。
【・・・・・・!】
あ、やっぱりしみますよね。
でも我慢したかいあって、傷口はすっかり綺麗になりました。
ここで登場するのが“蛙油キズナイン”
不気味蛙から採れる油に薬草等を計9種類調合して煮詰めた塗り薬です。
生き物が元々持っている自己再生力を高めて、切り傷や擦り傷を素早く治す事ができました。
ほとんど傷痕が残らない優れ物です。
亀谷商店で昔から販売している定番人気商品の一つなんですよね。
【少しシミルと思うけど我慢してね】
いや、それは水かける前に言ってあげてほしいんですが(汗)
2人は手分けして背中と翼に薬を塗り込んでいきます。
【・・・・・・!!
あ、えっと、ちょっと塗り方が雑です(汗)
人間と違って竜の肌は硬いですから、つい強くやっちゃう気持ちは分かりますけど。
見れば彼は苦悶の表情。
人間から見ても分かる程、渋い顔して耐えてます。
でも後ろにいる二人からは見えてないんですよね(汗)
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登場人物紹介

鈴音(すずね)


修道院の貧困を救うためにお金を稼げる大人を目指している孤児院出身の女の子。

努力と根性で高名な魔法学校に次席入学を果たした。

過去に壮絶な死別を経験しており、食べ物を粗末にする事を極端に嫌う。

明るく積極的で協調性にも優れ友達が多い。

しかし実は周囲の生徒と価値観が合わず、本当の友達と呼べるのはランカ一人しかいない。


モデル:CHOCO鈴音

蘭華(ランカ)


すずねの親友で魔法学校を主席で入学した秀才。

天才肌で大抵の勉強は授業のみで覚えられる。

しかし将来に対して何の希望も目標も持てず悩んでいる。

明るく行動的なすずねに刺激を受けてうわさ話を追いかけている。

意外と抜けている一面も。

好物はラーメン。


モデル:CHOCO蘭華

無糖あず(語り手)


二次創作“君影草と魔法の365日”の作者。

トーク作品で一話の“消えた石像の謎”や没ネタ、没エピソードも公開中。

君影草を好きになってくれた人はぜひ!

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