温室の住人
文字数 1,007文字
ポカポカ良く晴れた日曜日。
温室の奥からはちょっと変わった鼻歌が聞こえてきます。
皇子の石像を布巾で磨きながら、ご機嫌にこぶしをきかせているのは妖精のリリー。
異世界から迷い込んだ2人は結局帰る事が出来なかったんです。
でも彼女は落ち込むそぶりも見せず、どこで覚えたのか演歌を鼻歌にして、毎日皇子をピカピカに磨いていました。
「とりあえず言霊石は直ったし、ココなら雨風も防げる。ラッキーじゃん」
行くあての無い2人は温室の一角を間借りする事にしたんです。
「ねぇねぇ、紅茶淹れたよ」
「早くおいでよ」
ランカとすずのお誘いに応じて温室の中央へ。
ガーデンテーブルには紅茶が準備されていて、ティーカップとケーキが2セット。
おや?
よく見ると玩具の様に小さなティーカップもあります。
それはランカが趣味で集めてるミニチュアの食器でした。
リリーはソーサーを差し出してケーキのおねだり。
きっとすずとランカの一口分でお腹いっぱいになってしまいますね。
「ここなら食べるにも寝るにも困らないし、魔法で栄える国なら皇子を元に戻す方法も見つかるかも知んないだろ?」
過ぎた事を悩んでも仕方ありません。
その言葉は次へのステップを踏み出す強さを感じさせます。
「石化した皇子様はお腹空かないのかしら?」
「ねぇねぇ、おむすびとかおはぎでも供えてみる?」
「いや、ランカ…。お地蔵様じゃないから…」
「アンタ達…皇子を馬鹿にしてるだろ?」
3人の笑い声がこだまします。
「ココは気持ちが良いってさ。感謝してるとも言ってたよ」
リリーは皇子の言葉を2人に伝えました。
実は術が完全ではなく、 彼女にしか声が聞こえないんです。
それでも通訳になってもらえばコミュニケー ションもとれるし、すず達に不都合はありませんけどね。
「そうそう。皇子様って名前はなんて言うの?」
「ん? 皇子の名前? 皇子は皇子だよ。 お・う・じ」
「いや…答になってないし…」
ただ皇子に関する話に触れると、リリーは話をはぐらかして教えてくれません。
まぁ仮にも一国の皇子様な訳ですから推して測るべきなのでしょうが。
「それなら愛称を付けるの」
「石の像だから“石ちゃん”なんてどうよ」
「やめろって」
二人はリリーが“違う何か”を隠していると気付いていました。
でも彼女が話したくないならそれでいいと思っています。
それが結果的に騙される形になっても…。
温室の奥からはちょっと変わった鼻歌が聞こえてきます。
皇子の石像を布巾で磨きながら、ご機嫌にこぶしをきかせているのは妖精のリリー。
異世界から迷い込んだ2人は結局帰る事が出来なかったんです。
でも彼女は落ち込むそぶりも見せず、どこで覚えたのか演歌を鼻歌にして、毎日皇子をピカピカに磨いていました。
「とりあえず言霊石は直ったし、ココなら雨風も防げる。ラッキーじゃん」
行くあての無い2人は温室の一角を間借りする事にしたんです。
「ねぇねぇ、紅茶淹れたよ」
「早くおいでよ」
ランカとすずのお誘いに応じて温室の中央へ。
ガーデンテーブルには紅茶が準備されていて、ティーカップとケーキが2セット。
おや?
よく見ると玩具の様に小さなティーカップもあります。
それはランカが趣味で集めてるミニチュアの食器でした。
リリーはソーサーを差し出してケーキのおねだり。
きっとすずとランカの一口分でお腹いっぱいになってしまいますね。
「ここなら食べるにも寝るにも困らないし、魔法で栄える国なら皇子を元に戻す方法も見つかるかも知んないだろ?」
過ぎた事を悩んでも仕方ありません。
その言葉は次へのステップを踏み出す強さを感じさせます。
「石化した皇子様はお腹空かないのかしら?」
「ねぇねぇ、おむすびとかおはぎでも供えてみる?」
「いや、ランカ…。お地蔵様じゃないから…」
「アンタ達…皇子を馬鹿にしてるだろ?」
3人の笑い声がこだまします。
「ココは気持ちが良いってさ。感謝してるとも言ってたよ」
リリーは皇子の言葉を2人に伝えました。
実は術が完全ではなく、 彼女にしか声が聞こえないんです。
それでも通訳になってもらえばコミュニケー ションもとれるし、すず達に不都合はありませんけどね。
「そうそう。皇子様って名前はなんて言うの?」
「ん? 皇子の名前? 皇子は皇子だよ。 お・う・じ」
「いや…答になってないし…」
ただ皇子に関する話に触れると、リリーは話をはぐらかして教えてくれません。
まぁ仮にも一国の皇子様な訳ですから推して測るべきなのでしょうが。
「それなら愛称を付けるの」
「石の像だから“石ちゃん”なんてどうよ」
「やめろって」
二人はリリーが“違う何か”を隠していると気付いていました。
でも彼女が話したくないならそれでいいと思っています。
それが結果的に騙される形になっても…。