竜言語と魔法語

文字数 950文字

次の日。
すずとランカは再びドラゴンの元へ来ていました。
彼は伏せをする格好で彼女達に目線の高さをあわせます。
それは誇り高い竜族の彼が、二人を対等の存在であると認めた瞬間。
【世話になったな。この通り傷は完全に癒えた】
そう話す彼は起き上がると翼を大きく開いて見せます。
薬の効果も有りますが、竜族の生命力は凄いのですね。
傷はすっかりふさがり、鱗の一片に至るまで完全に復元されています。
【力になれて良かったの】
今回の事件も無事解決しました。
ただ怪我を治してあげる事が出来ただけではありません。
もしかしたら、この出会いが永年に渡る憎しみの関係を断つきっかけになるかも知れないのです。
二人はお決まりのハイタッチをして喜びを分かちました。
そして、それはドラゴンにとっても同じ事。
昨日は一刻も早く立ち去りたいと思っていたのに、今は帰るのが名残惜しくて仕方ありません。
勿論、人間全てを見直した訳ではありませんし、長く留まるのは危険に思えます。
が、少なくともこの二人は信用出来る。
確信した彼は恐怖より好奇心が勝ったのでした。
訊きたい事が山程あるのです。
【何故だ? お前達はこうも巧みに竜言語を話す事が出来るのだ?】
・・・・・・。
さっそく意味が分かりませんが、言葉の誤解は直ぐに解けました。
人間が魔法語として使っている言葉こそ竜言語そのものだったのです。
古の時代、人間は竜族から魔法が伝わり、魔法文明が起きたとされていました。
文明発祥の介入者は竜族という定説です。
彼等から教わったのは魔法式の基本のみ。
そこから実験・発明・昇華を繰り返し、長い年月をかけて高度なレベルに発展したのでした。
今の人間は竜族に負けない魔法文明を誇っています。
その結果、魔法語として発展した言葉が
元の竜言語に近づいた様です。
感覚的にはお互い緩い方言を聞いている感覚なのでしょう。
所々、違和感があるのですが大筋は理解出来るといった感じです。
そこまで解釈が進んで、やはり彼は驚かずにはいられません。
人間にとっては長い長い文明を辿る歴史。
しかし、それは竜族の歴史に比べれば、とても浅く短い時間。
【我等に並ぶ日も近い…、いや既に追い越しているかも知れんな】
ふと笑いが込み上げてきました。
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登場人物紹介

鈴音(すずね)


修道院の貧困を救うためにお金を稼げる大人を目指している孤児院出身の女の子。

努力と根性で高名な魔法学校に次席入学を果たした。

過去に壮絶な死別を経験しており、食べ物を粗末にする事を極端に嫌う。

明るく積極的で協調性にも優れ友達が多い。

しかし実は周囲の生徒と価値観が合わず、本当の友達と呼べるのはランカ一人しかいない。


モデル:CHOCO鈴音

蘭華(ランカ)


すずねの親友で魔法学校を主席で入学した秀才。

天才肌で大抵の勉強は授業のみで覚えられる。

しかし将来に対して何の希望も目標も持てず悩んでいる。

明るく行動的なすずねに刺激を受けてうわさ話を追いかけている。

意外と抜けている一面も。

好物はラーメン。


モデル:CHOCO蘭華

無糖あず(語り手)


二次創作“君影草と魔法の365日”の作者。

トーク作品で一話の“消えた石像の謎”や没ネタ、没エピソードも公開中。

君影草を好きになってくれた人はぜひ!

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