第41悔 ノニーへの報告

文字数 933文字


 いつの間にか円卓からクリストフ・コンバスとフェルディナンド・ボボンの姿が消えていたが、大観衆は“超巨人”騒動の方に気を取られていたため、気づくことはなかった。

 クリストフの妻と彼の弟はさすがに安否を心配していたが、円卓の下に潜り込んだ親友が面倒を見てくれているものだと信じて疑わなかった。

 そのフェルディナンド・ボボンは、円卓の下で大の字になり余韻(よいん)(ひた)っていた。
 なにしろ、初めて見る女性の(うつわ)から、その『器の神』からのメッセージとしか思えない洗礼を浴びたのだから。
 
 ノニー……なんだか、オレの人生の進むべき道が分かった気がしたよ、と心の中で片想いの恋人に語りかけるフェルディナンド。

 そういえば……見送りの日に言ってたな、ノニー。
 
 「コラ! フェルディナンド! 私が帰って来るまでにまともな仕事に就いとくんだゾ!!」
 ……って。と、感慨深げに続ける。

 なぁ、ノニー。「まとも」って何かね?
 もしかしたらそれは、フェルディナンドが初めて抱いたノニーへの反感かも知れなかった。

 逆に「まとも」じゃない仕事って何だろう? オレはね、ノニー……。
 そういうと天頂方向である円卓の裏板を〈キッ〉と(にら)んだ。現在ではない遠い未来を見据(みす)えるかのように。

 探偵……って言う仕事もアリだと思う。例えばだよ? 困ってる人の“(うつわ)”を見る事で、その人の抱える問題を解決する糸口を見つける探偵――
 数舜(すうしゅん)考えた後、フェルディナンドはこれから天職にしようとする職業名を心の中のノニー・ボニーに発表した。

 『牝穴探偵(めすあなたんてい)』ってどうだろう? 「まとも」じゃない? じゃあ『女器刑事(ジョキデカ)』は? どちらにしても『Vagina(ヴァギナ) Detective(ディテクティヴ)』。これが「まともな仕事」じゃないと言いきれるかい? ノニー、「職業に貴賤なし」だよ!

 思いついたフェルディナンドがむくりと上半身を起こすと、すでにイヴァノフの“居城”は制服の中に仕舞われていた。 

 ハッ! コトが済んでしまえば問題解決って訳か!
 フェルディナンドは納得し、うしろを振り返った。
 
 さぁ、今度はこっちの“器”だ! あんたは一体、どんな問題を抱えているんだ? 後悔三銃士の紅一点!



 第41悔 『ノニーへの報告』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆

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登場人物紹介

フェルディナンド・ボボン


この物語の主人公。

これといった定職には就いていないが、近所では昔から情熱的な男として知られている。

その実体は……。


ノニー・ボニー


皇立ルーム図書館で働く司書で、フェルディナンドの幼なじみ。 

他薦により『ミス・七つの海を知る女』コンテストに出場し優勝。
見聞を広めるための海外留学の旅に出る。

その実体は……。


クリストフ・コンバス

フェルディナンドの竹馬の友。
皇国を代表するファッション・リーダーとして活躍中。

その実体は……。


24歳、185cm。 

エンリケ後悔皇子


リゴッド皇国の第二皇子。

人類の行く末を案じて、後悔することを奨励する。

16歳。13センチ。

トスカネリ・ドゥカートゥス


エンリケの家庭教師であり、「盲目の賢人」、「後悔卿」の異名を持つ後悔研究所所長。

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