第110悔 我の名は。

文字数 2,021文字

 桃色の発泡性ワインをヴァギナから噴出させ、それを推力として飛び上がった時のイヴァノフの姿は、さながら長い尾をなびかせて太陽に向かって飛翔する不死鳥のそれだった。
 ギッザゾズ・ガザザナの股間に狙いを定めようとした彼女が後方宙返りを打ち、桃色の航跡で中空にくるりと円を描く。すると、女股(めこ)の口が自然と“世界蛇”に向き合う形となった。

 それから、自分が革新したと信じて疑わない近衛騎士団副長が、『新人類(ニュー・イェア)』としての異名を叫んだ。

 「我が名は、御女股桃色汗(オマンジュース)! 女股(めこ)の中の(おさ)! 極大の蛇よ、我が(ワザ)を見よ! そして、絶頂せよ!」

 女股長(めこおさ)オマンジュースが、ガザザナの股間に向けてワインとイントレランス・リキッドの混合液を噴射すると、ピンクの水鉄砲が強烈に“世界蛇”を叩いた。
 ところが、それはオマンジュースの思惑に反したか、「キモチ良いやぁ!」と極大の一物をさらに元気づける結果となった。今度は、忘我の超巨人が無意識に自身棒の根元を把持し、攻撃の意志を見せた。
 あたかもそれは『我恥無股(ガチンコ)』の再来だった。

 しかし、イヴァノフは先ほどすでに三階席の通路で『我恥無股』の仕合(しあい)を一戦、見ていた。
 あのときは私の女股を巡って激しい死闘が繰り広げられていたが、私とて戦士! 初めて見る『我恥無股』を前にして、脳内で「私ならどう闘うか」というシミュレーションもきちんとしていたのだ! 私を(あなど)るな、世界一の巨根よ!

 ということで、ガザザナとしては上空から降りかかってくるイヴァノフを自身棒で迎撃してやろうという思惑があったに違いなかった――が、それはイヴァノフの思う(つぼ)であった。

 もっとも、この場合――壺は壺でも、肉壺であったのだが。

 彼女は脳内で『射如何(シャドウ)ゲーム』をこの瞬間に済ませていた。オマンジュースのスプラッシュ・ジュースをガザザナの股間にぶつけたのは、“世界蛇”を挿入するための準備であった。潤いを与えていたのだ。

 中空から舞い降りてガザザナの体に飛びついたオマンジュースは、そのまま勢いを利用して“常世の国”に“世界蛇”を入国させた。

 〈ジョルムンガッ!〉という激しい挿入音と共に、オマンジュースの叫びが騒乱の議場内に轟いた。
 「はぐぁああああああああああああああああああああああああああああああっん!」

 やはり、イヴァノフの第一印象どおり――八〇センチを超える一物が人間の女股に全て入るはずもなかった。これは、イサベラの『皇女股光力(ヴァギナ・ライト・フォース)』で復活した女股ですら無理だった。

 しかし、全てではなくとも頭だけでも()れたい、というイヴァノフの想いは通じていた。ガザザナが“世界蛇”の根元を押さえてくれたおかげで、その頭だけはしっかり“常世の国”に入国していたのだ。
 「ま、まちがいない! あッの変態仮面との一戦で――私の、め、女股はさらにか、拡大していたんだ! あン! の謎の紳士に、れ、礼を言わねばなるまイイーッ!」
 そう言いつつ、オマンジュースはガザザナにしがみ付いて慎重に腰を振り始めていた。

 それに……。

 という想いもイヴァノフにはあった。
 ワ、私は、イサベラ様のお力によって妊娠しィ、子を産むのだァン! どんな子になるかは分からない、イサ、イサベラ様の『皇女股光(おめこう)』による子……と、そして、ヘンッ変態仮面の子を! ぎゃ、逆に出てくるのだ、この“常世の国”からゲン、ゲン、現世に! 双子が! だからこそ、ちょっ! 超巨人のこの亀頭程度の穴はッー、あらかじめ拡大しておかねばならないのだァーッ! ……しかし、何であればもうひとり……!

 そうして、オマンジュースは自身も(あえ)ぎながら、“世界蛇”を昇天に導いたのだった。
 「き、貴様も遠慮なくッ子種を射出せよぉー、ガザザナ! ゥンッ、産んでやるわ、貴様の子も!」

 我を失っているガザザナにもその言葉が届いた。耳を通して心で感じたと言った方が適切かもしれなかった。
 『皇女股光(おめこう)』によって自身棒が極大化したため、「もう一生、ノーチャンスだ」と自暴自棄になったガザザナを鎮めたのは、皮肉にも今まで一度も手に入らなかった女股そのものだった。
 ガザザナは、ありったけの思いをイヴァノフの“常世の国”に注ぎ込んだ。
 「ギ、ギ、ギ! キモチ……イイーッ!」

 尋常じゃない量の精液で膣内が満たされたイヴァノフは、うしろに飛び退きそのまま円卓の上に着地した。 


 《 そして、コルセット腰部のボタンを押して『Vagina and Anus Plugs』を起動させ、精液を膣内に閉じ込めると、もう一度、ニュー・イェアとして自己紹介をしてみせた。

 「我が名は、御女股桃色汗(オマンジュース)――女股の中の長」

 脱童貞を極大膣内射精で済ませた超巨人は、床に崩れるように膝を突いてから、オマンジュースに深々と頭を下げていた。 》

 ~メルモモ・カベルスキー著 『ルーム後悔議:女股と一物の祭典』より抜粋~

 

 第110悔 『我の名は。』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆

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登場人物紹介

フェルディナンド・ボボン


この物語の主人公。

これといった定職には就いていないが、近所では昔から情熱的な男として知られている。

その実体は……。


ノニー・ボニー


皇立ルーム図書館で働く司書で、フェルディナンドの幼なじみ。 

他薦により『ミス・七つの海を知る女』コンテストに出場し優勝。
見聞を広めるための海外留学の旅に出る。

その実体は……。


クリストフ・コンバス

フェルディナンドの竹馬の友。
皇国を代表するファッション・リーダーとして活躍中。

その実体は……。


24歳、185cm。 

エンリケ後悔皇子


リゴッド皇国の第二皇子。

人類の行く末を案じて、後悔することを奨励する。

16歳。13センチ。

トスカネリ・ドゥカートゥス


エンリケの家庭教師であり、「盲目の賢人」、「後悔卿」の異名を持つ後悔研究所所長。

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