第12悔 俺の若草物語
文字数 1,906文字
絶体絶命のシルレールは、もはや汗でびしょ濡れの山脈覆いの事などを気にしている余裕もなかった。
十字柱上で
少女のあまりに
シルレールの必死の抵抗を黙って見ていたタイタスも、それは同じだった。
ところが、彼女にとってはこれが良くなかった。
〈ハラリ〉と地面に落ちる白い布――。
彼女は秘境を隠すため、足を組もうと前傾姿勢になったが、逆に白く丸い
見物客も一斉に前傾した。
一番近くにいたタイタスには、一瞬、彼女の“若草”が見えた。
あの草は……
その時、彼の身体の一部に
ふと目の端に入った
「どんなに素敵なことだろう!」と。
だが、そんな酷いことが俺に出来るのか?
という自分自身に対する不信感は、局部の天幕がすぐに
タイタスが右手の三銃士専用レイピアを天高く掲げながら「思い立ったが吉日よ!」と叫ぶ。
見物客がその剣の切先に注目する
よし、上手くいった! 誰も気づくまい!
そうすると今度は、何らかの透明な
見物客が騒然とする中、〈クォーン〉という音を立て目を覚ました愛馬に、大きく脚をあげて
フフフ! 俺の“レイピア”は、観客にとってはあくまでこの処刑劇のクライマックスのお楽しみよ! ここで見えては
それは、小劇団の主宰のサガと言えたのだろう。
この展開に熱狂する
それを聞いたタイタスは気を良くし、ファンサービスとしてのアドリブを思いついた。
そうだ! 俺の“レイピア”でシルレールの“若草”を刈る前に、この五千人はいようかという観客どもに彼女の山脈を解放してやろう! きっと、会場は蜂の巣をつついたような騒ぎになるだろうな! そののち、いよいよ主役の登場ってワケだ!
「そうと決まれば、話は早い! まずは、あの山脈覆いをレイピアで
覚悟を決めたのか顔を伏せ目を閉じ、「兄さん、ごめんなさい。わたしも今、そちらに――」と祈りの言葉を
「念仏など唱えても無駄よ! この場所この瞬間! 今、最も神に近い者は――この俺なのだ!」
しかし、シルレールの覆いをレイピアが剥ぎ取ろうとしたその時! 処刑台のその先に――タイタスの視界に信じられないものが飛び込んで来た!
「お前!」タイタスが叫ぶ!
ジャックが見物客の中にいたのだ!
タイタスは慌てて愛馬を急転回させ、もろとも転倒した。
「(ジャック、)お前! そこで何をしている!」
泥にまみれたタイタスが上半身を起こし観客席の中に視線を投げると、見物客の
そして、誰もが絶句した。
ジャックは一糸まとわぬ姿で、シルレールを見ながら自己慰安会を開催していたのだ!
第12悔 『俺の若草物語』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆