第34悔 ナニをすませば
文字数 1,764文字
午前五時――世界遺産『マグアインブルグ』目当ての観光客も少しずつ見掛けるようになってきていた。
それでも構うことなく興奮状態にある妄夢と無毛猫は死闘を繰り広げていたが、このまま闘いを続けていたら、それこそ本物の性犯罪取締官がやって来かねない。
区切りの良いところで、どちらから言い出すわけでもなく自然に闘いは終了となった。
クリストフはアンナマリアを
「いやぁ、マイッタ! 全然勝てなかったね、僕!」
「フフフ、そうでしょう! 九回? 十回くらいヤったよね! でも、先輩の
「え? そうなの! 全然、気づかなかった!」と喜ぶクリストフ。
「だって、あれは
「ハハハ! そりゃそうだ!」
ふたりの笑い声が、朝のパスリン住宅街にコダマした。
何度もプッシー・ハイジーンに妄夢液を注入したことによる妊娠を心配するのは
良いじゃないか! こんなに可愛くて良いコなんだ、妊娠させても!
アンナマリアも彼のその心意気を察してか、今日が『安全日』であることを言わなかった。
「あ、先輩! その坂を上って!」アンナマリアが道順を指示する。
自動馬であっても、二人乗りでは上るのが困難な急勾配の坂だった。
ガタつく機械仕掛けの馬をアンナマリアが心配する。
「大丈夫かな? この自動馬」
「なあに、これしき! 初めて会ったその日から……君を乗せて、この坂を上るって――決めてたんだ!」
そう言ってから、クリストフは力を込めて自動馬のエンジンスロットルを全開にした。
「そんなの
アンナマリアは自動馬の背から飛び降りると、クリストフの前に回り改めて乗馬した。
対面座位の形で抱き合う二人は、二つの性器を結合させた。
それと同時にアンナマリアが激しく腰を前後にスライドさせると、
「先輩の
クリストフは、耳元で言葉攻めをしてくるこの後輩をたまらなく
「ハハハッ! 何を言ってるんだ、泣いてるのはアンナマリアのプッシー・ハイジーンだろ?」
自動馬の上でふたりが愛し合うとエンジンの回転数も上がり、坂道を順調に駆けだした。
クリストフが師匠ベルベトーから借りたこの自動馬は最新鋭の機種で、乗り手の生体反応を感知し反映する検知器が搭載されていた。つまり妄夢が猛れば猛るほど、自動馬は駆けた。
その仕組みを見抜いてプッシー・ハイジーンにより妄夢を猛らせたアンナマリアも、さすがはデザイナー志望の学生と言えた。
坂を上りきると、そこには公園があった。園内には人工の小さな丘があり、それは日の出を見るのに最適な場所となっていた。
クリストフは丘の下に自動馬を停めると、アンナマリアを対面座位から
「あ、あのさ……僕は今日にもルームに帰らなくちゃならないんだけどさ……」
クリストフが緊張した様子で言葉を
「……はい」
「きっと、一人前のデザイナーになるから……僕とそのぅ……結婚してくれませんか?」
「うん!」間髪入れずにアンナマリアは返事した。
「えっ! ホントに?」と間抜けな声を出すクリストフ。
「あたしも……マグアインブルグ門の下で先輩に子種を注ぎ込まれてる間中ずっと、そうなるとイイな――って」と、彼女は告白した。
「やったぁ!」クリストフはそう叫ぶと、勢いあまって彼女の中に射精した。
そうこうしている内に二人は丘の頂上に到着した。
朝焼けが、それでもなお繋がったままの二人の性器を明るく照らした。接合部から滴り落ちる白濁液が陽の光によって、黄金色に輝いていた。
第34悔 『ナニをすませば』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆