第88悔 届け、遭難信号!
文字数 2,761文字
イヴァノフの開帳された
それは、例えるなら星々のない
しかし、だ。あの中に……もし、あの中にスピナッチが言うように『常世の国』があるのなら、イヴァノフの“城門”は重力の塊でありながら……同時に異世界への門、あるいは天国への扉とも言えるだろう。……ならば名付けなくてはならないだろう、『
刻一刻と理性を消失しつつある
すると、クリストフの意に反して“妄夢”が〈グンッ〉と伸びた。それによって“頭”の先も床を突いた。
やはり、イサベラ様の『
クリストフがその宇宙船を手に取ると、それは〈ジンジン〉と脈打ち今にも出発しそうな勢いだった。
この逡巡する妄夢を見て、変態のわりに気を遣っているのか、と考えたイヴァノフが助け船『
「何をしている? 私は約束を守る女だ。例えそれが私の了解なしで契約されたものだとしてもな。遠慮はいらない。さぁ、早くその素晴ら――いや、その、私にはそれが何だかよく分からないが、その肉の棒みたいなモノをココに差し込め。きっと、落ち着くだろう」
そう言ってから更に
股間の大層立派な一物を脈動させる妄夢を見て、すぐそばにいる新米宮廷詩人が大声で独り言ちた。
「ッ
イヴァノフに挿入できることを羨ましがっているのか、はたまた“妄夢”の偉大さへの讃辞か、どちらともつかないスピナッチの独り言に辺りの観客も同意した。
「うん、確かにいいなぁ!」、「惚れ惚れするほど形もいいものなぁ!」
それを聞いた近衛騎士のふたりが通路にへたり込む詩人の背後に回り、彼の肩を押さえ付けた。
「よもや、どさくさに紛れて先生より早く
確かにスピナッチの“道化”も既に回復の兆しを見せ、硬化し始めていた。
「詩人殿。あんたのも随分立派だが、残念ながらウチの副長はもうウチの先生のモノしか目に入らねえ。今日のところは我慢してくんなせえ!」とヒューゴがいなせなルームシティ育ちの『ルーミック』ぶりを示しながらスピナッチの肩を叩いた。
「ちぇ! 何だい何だい! お前たちだって、本当はイヴァノフの女股を横取りしたいんだろ?」と、スピナッチが手足をジタバタさせると、インペリアル・ガードの
「馬鹿を言え、スピナッチ殿」とクリム。
「我らの想いは、変態先生の肉剣と共にある。肉剣が副長のお女股を深く刺す時――我らもまた、副長の中にいるのだ」
これにカスティリョが付け加えた。
「
「なんて奴らだ! 悔しくねえのか?!」
スピナッチの煽りがインペリアル・ガードの胸をえぐる。
当初の――彼らの直属の上司エンリケから与えられた命令では、インペリアル・ガード組は「露出狂の不届きモノを捕らえて“後悔”させること」が目的だった。
それが、どうだろう? 今やその露出狂の
一体、何をやっているのだ? 俺は! エンリケ皇子の命令にも背き、そして、最愛のイヴァノフ副長の女股を他人棒に取られようとしている!
不甲斐なさがクリムの心中を支配する。
隣でスピナッチの左脚を押さえるカスティリも想いは同じだったようで、涙目でイヴァノフの深淵を食い入るように見つめていた。
そのイヴァノフの女股は、今まさに絶頂の寸前にあった。
“妄夢”を迎え入れる期待から噴き出した彼女流の『プッシー・スプラッシュ・マウンテン(PSM)』により、黒い穴は濃霧に包まれていた。
そして、その中心点、重力の結集地に向かって宇宙船『妄夢号』はジリジリと引き寄せられていた。
クリストフが自分自身の理性と良心に向けて――あるいは、良識ある近衛騎士以外の誰かに向けて、“船内”から最後のメッセージを送る。
ダメ……だ。この…巨大な重力から…逃れ……られない。阻止…限界点を……突破し…た……。意識も……遠のいて……きた…。『常世』に…出るか……重力に…潰される……か…。イチかバ…チか……だ…。誰か……・・
いよいよ『妄夢号』は、船首がイヴァノフの女股の陰核を
女股の…核だ……。この…先の……通信…は…不…可……能…・。さら……ば…・・
――そう言ってクリストフが
三階席通路東側で繰り広げられているこの挿入劇を阻止する声が、クリストフの耳に届いた。
「罪深き棒の持ち主よな! “マグアインブルグの幻”」
聞き覚えのある声! まさか――!
寝起きに冷水を顔面に掛けられるがごとく一息に正気を取り戻したクリストフは、完全に阻止限界点を越えたと思われた『妄夢号』の航行を止めると、声のした方向に首を振った。
そこ――四階席東側通路の欄干の上には、全身白を基調としたコスチュームを身に纏った何者かが立っていた。
「この世に
「な、なんだって? 何者だ!?」と近衛騎士ヒューゴが問うと、おそらく女性と思われる声の持ち主が白いマントを
「吾輩の名は『
開かれたマントの裏には無数の陰茎が括りつけられ、恥丘には一切の毛が無く――また世にも美しい桃色のお女股が、挿入劇の登場人物を見下ろしていた……。
第88悔 『届け、遭難信号!』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆